反転増幅回路とワンショットで作るF/Vコンバータ
図1は,OPアンプ(U1:AD8602)(1)による反転増幅回路と,ワンショット・パルス生成回路で構成したF/Vコンバータです.
ワンショット・パルス生成回路は,5V電源のCMOSロジック回路(A1~A4)を使用しており,出力(OS)のパルス幅は48μsに設定されています.
このF/Vコンバータは,IN端子に入力された信号の周波数に比例した電圧を,OUT端子に出力します.ここで,IN端子に周波数5kHz,振幅5Vの矩形波を入力したとき,OUT端子の電圧の平均値はいくつになるでしょうか.(a)~(d)の中から,一番近い値を選択してください.

IN端子に周波数5kHz,振幅5Vの矩形波を入力したとき,OUT端子の電圧の平均値は?
(a) 1.35V (b) 2.35V (c) 3.35V (d) 4.35V

F/Vコンバータ(Frequency to Voltage Converter)は,入力信号の周波数に比例した電圧を出力する回路です.MOSFET(M1)は,スイッチとして動作し,パルス電流を反転増幅回路に入力する働きをします.まず,そのパルス電流がいくつになるかを計算し,その電流によってOUT端子の電圧の平均値がいくつになるかを考えてください.
OPアンプ(U1)の非反転入力端子(A点)の電圧は,Vcc/2となっています.M1が常時OFFしている状態のOUT端子の電圧は,R3により下方向にレベル・シフトされ,0Vになります.
ワンショット・パルスにより,M1がONすると,R4に電流(IR4)が流れ,その電流は反転増幅回路の入力電流となります.B点の電圧がVcc/2となるため,IR4の大きさは「IR4=Vcc/(2*R4)」となります.
この電流によりOUT端子に発生する電圧の平均値(VOUT)は,ワンショット・パルスのパルス幅をTOPとし,入力信号の周波数をfINとすると次式で表されます.
VOUT=*TOP*fIN *R1*IR4
問題文の数値を代入すると,次式のように2.35Vになります.
VOUT=TOP*fIN *R1*IR4*=(48μ*5k*20k*5)/(2*5.1k)=2.35
そのため,正解は「(b) 2.35V」です.
●F/Vコンバータとは
F/Vコンバータは,周波数を電圧に変換する回路で,入力信号の周波数に比例した電圧を出力し,主に,次のような用途で使用されます.
・回転速度の検出
モータなどの回転数に比例したパルス信号を,F/Vコンバータで電圧に変換し,メータ等を駆動します.
・長距離信号伝送
アナログ信号を長距離伝送する場合,V/Fコンバータ(2)を使用して,アナログ電圧を周波数に変換して送り,F/Vコンバータで電圧に再変換することで,ノイズの影響を受けにくくなります.
●F/Vコンバータの動作原理
図2は,図1のF/Vコンバータの動作を説明するための回路図です.スイッチ(S1)は,入力信号の周波数に比例した,ワンショット・パルスでON/OFFします.

スイッチ(S1)は,入力信号の周波数に比例した,ワンショット・パルスでON/OFFする.
S1がONしている期間,電流I1は,主にコンデンサ(C1)に流れて,C1を充電します.S1がOFFすると,C1の電荷はR1によって放電されます.入力信号の周波数(fIN)に対して,C1,R1の時定数が充分長い場合,OUT端子の電圧は徐々に上昇していき,一定値で安定します.その電圧の平均値(VOUT)は,S1に流れるパルス電流(I1P)の平均値(I1AVG)とR1を掛けたものになります.
I1AVGは,ワンショット・パルスのパルス幅をTOPとすると,式1で表すことができます.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)そして,VOUTは式2のように表されます.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)式2から分かるように,VOUTは周波数(fIN)に比例した電圧になります.
●5V単一電源で動作するF/Vコンバータ回路の動作
図3は,図2の原理を基に,5V単一電源で動作するように設計した,F/Vコンバータ回路です.

抵抗(R4)とMOSFET(M1)が,図2の電流源(I1)とスイッチ(S1)の働きをします.R5とR6でVccを分圧し,OPアンプの非反転入力端子(A点)の電圧を,Vccの1/2に設定しています.
OPアンプが正しく動作しているとき,反転入力端子の電圧は,非反転入力端子の電圧と等しくなるため,B点の電圧もVcc/2になります.B点の電圧がVcc/2となるため,M1がONしたときに流れるR4の電流(IR4)は,式3で計算できます.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)このIR4は,図2のS1に流れるパルス電流(I1P)に相当します.R3は,OUT端子の電圧をGND側にレベルシフトするための抵抗です.R3が無い場合,OUT端子の電圧は,Vcc/2となりますが,この電圧を下げることで,出力のダイナミック・レンジを大きくしています.
B点の電圧が一定値となるため,R3に流れる電流(IR3)は定電流とみなすことができます.そのため,M1が常時OFFしているときのOUT端子の電圧(VOUT0)は,式4で表すことができます.
・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)ここで「R3=R1」とすると,VOUT0は,0Vになり入力信号が無いときのOUT端子の電圧を0Vとすることができます.「R3=R1」としたときの,入力周波数(fIN)とOUT端子の電圧の関係式は,式2を使用して,式5のように計算することができます.
・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)fIN=5kHz,TOP=48μsとすると,出力電圧は,式6のように2.35Vになります.
・・・・・・・・・・・・・・(6)
●ワンショット・パルス生成回路の動作
図4は,図1のワンショット・パルス生成回路をシミュレーションする回路です.この回路のシミュレーション結果を使用して,ワンショット・パルス生成の原理を説明します.

LTspiceで使用できるロジック素子を使用し,論理振幅を5Vに設定している.
A1~A4は,LTspiceで使用できるロジック素子で,A1がバッファ,A2とA3がインバータです.A4は,5入力のANDもしくはNANDとして使用できる素子ですが,ここでは2入力ANDとして使用しています.LTspiceのデジタル素子では,未接続の端子を存在しないものとして扱われます.また,デフォルトの論理振幅は,1Vとなっています.ただし,図4ではValueに「Vhigh=5」と記入することで,論理振幅を5Vにしています.論理振幅を5Vに設定した場合,スレッショルド電圧は,2.5Vになります.
図5は,図4のシミュレーション結果です.

最上段は,A点の電圧で,バッファ(A1)を経由した入力信号です.
2段目は,B点の波形で,A点の出力を抵抗R2とC2によって遅延させたものです.A点の電圧の立下りとともに,B点の電圧も急速に0Vになっていますが,これはMOSFET(M2)によって急速放電しているためです.急速放電を行わないと,入力信号の周波数が高くなったときに,B点の電圧が下がりきらず,ワンショット・パルス幅が狭くなってしまいます.
3段目は,C点の波形で,B点の波形を入力した,インバータ(A3)の出力です.B点の電圧が2.5Vを越えると,0Vに立ち下がっています.
最下段は,OS端子の出力波形で,A点の信号とC点の信号のANDをとったものです.A点とC点が同時にハイ・レベルのときだけ,ハイ・レベルとなり,C2,R2による遅延回路によって決まる,一定のパルス幅(TOP)の信号となります.TOPは,B点の電圧がGNDから論理振幅の1/2の電圧になるまでの時間で,式7で計算することができます(3).
・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)図4の定数を代入すると47μsとなり,図5のシミュレーション結果とほぼ一致しています.
●F/Vコンバータを検証する
図6は,反転増幅回路と,ワンショット・パルス生成回路で構成した,F/Vコンバータをシミュレーションする回路で,図1と同じ回路です.

「.meas」コマンドで,OUT端子の平均値を「VOUTAVG」という変数に代入する.
Vinは,振幅5Vの矩形波を発生させますが,その周波数は変数fで設定しています.そして,「.step」コマンドでfを1kから9kまで,2kステップで変化させるトランジェント解析を行います.そして,「.meas」コマンドで,25ms~30msの間のOUT端子の平均電圧を計算し,「VOUTAVG」という変数に代入します.
図7は,図6のシミュレーション結果です.OUT端子の電圧は,時間とともに大きくなり,やがて一定の電圧となっています.そして,入力周波数が高くなるほど,OUT端子の電圧が高くなっていることが分かります.

入力周波数が高くなるほど,OUT端子の電圧が高くなっている.
次に,入力周波数とOUT端子の平均電圧の関係をグラフ化します.「Ctrl+L」キーを押して[Output Log]を表示し,その中で右クリックして,[Plot .step'ed .meas data]を選択します.
すると,図8のように,横軸が入力周波数(f)で,縦軸がOUT端子の平均電圧(VOUTAVG)のグラフが表示されます.OUT端子の平均電圧は,入力周波数に応じて,直線的に変化していることが分かります.

OUT端子の平均電圧は,入力周波数に対応して,直線的に変化している.
以上,F/Vコンバータについて解説しました.F/Vコンバータは,FM変調波の復調に使用することもできます.ワンショット・パルス回路を使用した復調回路は,「パルス・カウント検波」と呼ばれ,FM放送受信機等で使用されています.
◆参考・引用*文献
(1) AD8602 データシート:アナログ・デバイセズ
(2) V/Fコンバータで作る積算電流計:CQ出版社
(3) 無安定マルチバイブレータの発振周波数はいくつ?:CQ出版社
解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice12_045.zip
●データ・ファイル内容
OneShot.asc:図4の回路
OneShot.plt:図5のグラフを描画するためのPlot settingsファイル
FVC.asc:図6の回路
FVC.plt:図7のグラフを描画するためのPlot settingsファイル
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