反転増幅回路で作るR-2Rラダー型D-Aコンバータ




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■問題
【 非線形回路 計測回路 ADA4511 ADG1534 】

小川 敦 Atsushi Ogawa

 図1は,OPアンプ(ADA4511)(1),アナログ・スイッチIC(ADG1534)(2),および抵抗で構成した「R-2Rラダー型D-Aコンバータ」です.OPアンプ(U1)は,反転増幅回路として動作します.
 アナログ・スイッチICは,IN1~IN4の入力によってS1~S4のスイッチをコントロールすることができます.IN1~IN4の入力がLowレベルのとき,それぞれのスイッチのD1~D4端子は,A1~A4端子と接続されます.
 ここで,IN4のみをHighレベルとして,スイッチ(S4)のD4端子とB4端子が接続されるようにしたとき,OUT端子の電圧は(a)~(d)のどれになるでしょうか.なお,Vrefの値は-4Vとなっているものとします.


図1 R-2Rラダー型D-Aコンバータの回路図
スイッチ(S4)のD4端子とB4端子が接続されるようにしたとき,OUT端子の電圧は?


(a) -0.125V  (b) -0.25V  (c) 0.125V  (d) 0.25V

■ヒント

 R-2Rラダー型D-Aコンバータは,抵抗値が1:2の2種類の抵抗で構成したD-Aコンバータです.図1のR1~R4に流れる電流をアナログ・スイッチICのS1~S4で制御し,Rfで電圧に変換します.また,S1で最上位ビットの電流を制御し,S4で最下位ビットの電流を制御します.
 図1の回路が4ビットのD-Aコンバータとして動作していることを踏まえて,最下位ビットの電流値から,OUT端子の電圧を求めてください.

■解答

(d) 0.25V

 図1の回路は,4ビットのD-Aコンバータです.R1に最上位ビットの電流が流れ,R4に最下位ビットの電流が流れます.そのため,最下位ビットの電流をIとすると,最上位ビットの電流は「23I=8I」となります.
 ここで,OPアンプ(U1)の反転入力端子の電圧がGNDと等しいことから,R1の電流はVrefの電圧をR1で割ったものになります.この電流が8Iとなるため,Iの値は次式のように-25μAと計算できます.
  I=Vref/(8*R1)=-4/(8*20k)=-25μA
 この電流が反転増幅回路のRfで電圧に変換されるため,OUT端子の電圧(VOUT)は次式のように0.25Vになります.
  VOUT=-I*Rf=25μA×10k=0.25V

■解説

●R-2Rラダー型D-Aコンバータとは
 R-2Rラダー型D-Aコンバータは,抵抗値が1:2の2種類の抵抗のみで構成され,ディジタル信号をアナログ信号に変換する回路です.使用する抵抗は,基準となる抵抗値Rの抵抗と,その2倍の抵抗値2Rの抵抗です.この2種類の抵抗を,はしご(Ladder)状に配置した構造となっています.R-2Rラダー型D-Aコンバータには,電圧出力タイプと,電流出力タイプの2種類があります.

▼電圧出力タイプ
 図2は,電圧出力4ビットR-2Rラダー型D-Aコンバータです.スイッチ(S1~S4)を4ビットのディジタル信号で制御することで,A点にディジタル信号に対応した電圧が出力されます.


図2 電圧出力4ビットR-2Rラダー型D-Aコンバータ
スイッチをディジタル信号で制御することで,A点に対応した電圧が出力される.

 OPアンプ(U1)は,ゲイン1の非反転増幅回路とし,バッファ・アンプとして使用しています.電圧出力タイプは,スイッチ部分を0VとVrefを出力するロジックICに置き換え,スイッチICを使用せずに構成することもできます(3)

▼電流出力タイプ
 図3は,電流出力4ビットR-2Rラダー型D-Aコンバータです.図2と同様に,スイッチ(S1~S4)を4ビットのディジタル信号で制御すると,Vrefの値とディジタル信号に対応した電流(IO)が出力されます.


図3 電流出力4ビットR-2Rラダー型D-Aコンバータ
スイッチをディジタル信号で制御することで,対応した電流が出力される.

 OPアンプ(U1)は,反転増幅回路となっており,抵抗(Rf)で出力電流(IO)を電圧に変換してOUT端子に出力します.電流出力タイプは,アナログ信号とディジタル・コードの掛け算を行う,乗算DACとして使用することもできます.
 図1の回路は,この電流出力4ビットR-2Rラダー型D-Aコンバータとなっています.

●電流出力R-2Rラダー型D-Aコンバータの動作
 図4は,電流出力R-2Rラダー型D-Aコンバータの動作を解説するための回路です.


図4 電流出力R-2Rラダー型D-Aコンバータの動作を解析するための回路
R1~R4に流れる電流は(8I~I)まで2進数で重み付けされたものになっている.

 A点に接続されている抵抗R4とR5の抵抗値は,どちらも同じ2Rとなっています.そのため,R4とR5に流れる電流は等しく,Iという電流が流れます.そして,R8にはR4とR5の電流を足した2Iという電流が流れます.
 ここで,A点とGND間の抵抗値をRAGとします.A点とGND間には2Rという抵抗値の抵抗が2本並列接続されているため,RAGは,式1のようにRとなります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

 次に,B点の右側の抵抗値をRBGRとすると,R8とRAGが直列接続されていることになるため,RBGは式2のように2Rとなります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)

 R3とRBGRはどちらも同じ2Rなので,R3とRBGRには同じ電流が流れますが,R8の電流が2Iなので,R3の電流も2Iとなります.そして,R7にはR3とRBGRの電流を足した4Iという電流が流れます.
 ここで,B点とGND間の抵抗をRBGとすると,A点とGND間と同様に,2Rという抵抗値の抵抗が2本並列接続されていることになるため,RBGは式3のようにRとなります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)

 C点,D点に関してもまったく同様に計算することが可能で,R2には4Iという電流が流れ,R1には8Iという電流が流れます.
 図4は,4ビットとなっていますが,さらにビット数を増やした場合も,同様に計算することができます.このようにR1~R4の抵抗に流れる電流は8I~Iまで2進数で重み付けされたものになります.そのため,S1~S4のスイッチで,この電流をGNDに流すか,出力電流とするかを選択することで,D-Aコンバータとして動作します.R1に流れる電流が8Iとなることから,Iの値は式4のように計算できます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)

 式4から分かるように,図4の回路の出力電流はVrefに比例します.そのため,電流出力R-2Rラダー型D-Aコンバータは,Vrefにアナログ信号を入力することで,アナログ信号とディジタル・コードの掛け算を行う,乗算DACとして使用できます.

●電流出力R-2Rラダー型D-Aコンバータを検証する
 図5は,図3のシミュレーション回路です.図1とも同じ回路ですが,マイコン部分を4ビット・カウンタに置き換えています.カウンタ出力のQ1~Q4がアナログ・スイッチICのIN1~IN4端子に接続されています.


図5 電流出力4ビットR-2Rラダー型D-Aコンバータのシミュレーション回路
4ビット・カウンタの出力で,ADG1534をコントロールする.

 LTspiceに登録されている,アナログ・スイッチICのADG1534のモデルは,スイッチが1つだけのモデルとなっているため,新たに4個入りのシンボルとサブサーキットを作っています.また,使用しているOPアンプはオフセット電圧の小さなADA4511で,Rfと並列に接続されているコンデンサ(C1)は異常発振を防止するためのものです.
 Vrefが-4VでR1が20kΩとなっているため,この電流出力4ビットR-2Rラダー型D-Aコンバータの最小出力電流変化量は式4を使用して式5のように-25μAと計算できます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)

 この電流が,帰還抵抗(Rf)で電圧に変換されるため,スイッチ(S4)が変化したときのOUT端子の電圧変化(ΔV:電圧分解能)は,式6のように0.25Vになります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6)

 図6は,図5のシミュレーション結果です.上段がOUT端子の電圧で,下段が4ビット・カウンタの出力(ADG1534のコントロール信号)です.


図6 図5のシミュレーション結果
OUT端子の電圧はカウント値に対応して0.25Vステップで電圧が上昇している.

 Q1(IN4)がHighレベルになると,OUT端子の電圧は0.25Vとなり,カウント値に対応して0.25Vステップで電圧が上昇していくことが分かります.

●電流出力R-2Rラダー型D-Aコンバータの乗算機能の検証
 図7は,図5のVrefの出力を,直流電圧からピーク電圧1Vで周波数1kHzの正弦波に変更したときのシミュレーション結果です.


図7 電流出力R-2Rラダー型D-Aコンバータの乗算機能シミュレーション結果
カウント値に対応して正弦波の振幅が変化している.

 カウンタのカウント値に対応して正弦波の振幅が変化しており,アナログ信号とディジタル・コードの乗算が行われていることを示しています.
 以上,反転増幅回路を使用した電流出力R-2Rラダー型D-Aコンバータについて解説しました.電流出力R-2Rラダー型D-Aコンバータは,抵抗値を適切に設定することで,Vref入力に電源電圧を越える電圧を印加することもできます.

◆参考・引用*文献
(1) ADA4511データシート:アナログ・デバイセズ
(2) ADG1534データシート:アナログ・デバイセズ
(3) 2種類の異なる抵抗を使用したD-Aコンバータ:CQ出版社


■データ・ファイル

解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice12_029.zip

●データ・ファイル内容
4bit_R_2R_DAC.asc:図5の回路
4bit_R_2R_DAC.plt:図6のグラフを描画するためのPlot settingsファイル
4bit_R_2R_Multi.asc:図7をシミュレーションするための回路
4bit_R_2R_Multi.plt:図7のグラフを描画するためのPlot settingsファイル
ADG1534_4.asy:ADG1534スイッチ4個入りシンボル
ADG1534_4.asc:ADG1534スイッチ4個入りサブサーキット

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