コンテンツコード | DP33456 |
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著者 | 遠坂 俊昭 |
発行元 | CQ出版社 |
価格(ライセンス料金) | 2,530円 |
仕様 | A5判 315ページ PDF 約7Mバイト |
発行日 | 2012/01/01 |
更新日 | 2012/01/05 |
制限 | ダウンロード制限: サービス停止まで |
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ライセンス条件 | ●本書は著作物であり,著作権法により保護されています.本書の一部,または全部を著作権者に断りなく,複製または改変し他人に譲渡すること,インターネットなどに公開することは法律により固く禁止されています.違反した場合は,民事上の制裁および刑事罰の対象となることがあります. ●本書は,CQ出版社から出版された,2011年6月1日 第6版発行の同タイトルの書籍をPDFファイルとしたものです.電子版制作の都合上,オリジナルの書籍と比べて,一部の書体や線の太さ・種類が変更になっている場合があります.また,電子版という性格から,オリジナルの書籍と同一のプリント品質は保証できません.ご了承ください. ●予告なく,本サービス(Tech Village 書庫&販売)を一時休止または終了することがあります.サービス休止時やサービス終了後は,本コンテンツをダウンロードまたは閲覧できなくなります. |
解説
PLL(Phase Locked Loop;位相同期回路)技術は,周波数安定度の高い信号を生成するための回路技術として広く普及しています.そのほかにも,ディジタル・データからのクロック信号の再生,FM信号の復調,モータの回転速度制御などにも応用できる汎用性の高い回路技術です.
PLL回路を設計する際には,回路の各ブロックの伝達関数を求めて,負帰還の位相余裕からループ・フィルタの特性を目的に応じて設計することが重要です.それは,ループ・フィルタの特性によって,信号純度やロック・スピードが左右されるからです.一般的なPLL回路においては,各ブロックの伝達関数を求めることはそれほど難しいことではなく,ループ・フィルタも比較的低次数のものが使用されます.本書では,PLL回路におけるループ・フィルタ定数の算出を主題として,具体的な設計事例をできるだけ多く示しながら,回路シミュレーションと実測によりその特性を検証していきます.
目次
第1章 PLLの動作と回路構成PLLとシンセサイザ技術のあらまし
1.1 PLL回路の基本動作
●PLL回路を構成する三つのブロック
●PLLの応用と周波数シンセサイザ
●PLL回路の各部の動作波形
1.2 PLL回路および周波数シンセサイザの構成
●入力周波数のN倍出力を得る方法
●入力周波数のN÷M倍出力を得る方法---入力に分周回路を入れる
●入力周波数のN÷M倍出力を得る方法---出力に分周回路を入れる
●入力周波数のN×M倍出力を得る方法---プリスケーラを追加する
●ヘテロダインと組み合わせる---(fin×N)+fLを得る
● DDS(Direct Digital Synthesizer)と組み合わせる
1.3 PLLシンセサイザでは信号純度がポイント
●理想シンセサイザ出力は1本のスペクトル
●AM---振幅変調が起こると---AM性ノイズ
●FM---周波数変調されると---FM性ノイズ
●FM性ノイズの影響
1.4 シンセサイザ以外へのPLLの応用
●ディジタル・データからのクロック再生
●周波数-電圧変換---FM復調回路
●モータの回転スピード制御
コラム■dBcとは
コラム■PLL回路の発明はベルシーゼ氏
Appendix A PLL回路はOPアンプと同じ負帰還の応用
A.1 OPアンプ回路との相似
●PLL回路とOPアンプ回路の似ているところ
●PLL回路とOPアンプ回路の違うところ
A.2 増幅回路に学ぶ負帰還の仕組みと特性
●負帰還のあらまし
●負帰還によって改善される特性
●負帰還のもっている問題点---動作不安定になる条件
●負帰還のようすをシミュレーションする
●利得-周波数特性のピークをAβの複素平面に見る
第2章 PLL回路の伝達特性
PLL回路の特性はループ・フィルタで決まる
2.1 PLL回路の伝達特性を理解しよう
●PLL回路の各部の伝達特性
●簡単な例題---クロック50逓倍回路のとき
●ループ・フィルタ特性を除いた伝達特性を求める
●使用しているループ・フィルタ特性とPLL回路の伝達特性
●PLL回路における負帰還の効果
2.2 ループ・フィルタ設計の基礎知識
●CRローパス・フィルタの詳しい特性
●ステップ特性をもたせたCRローパス・フィルタ
●CR多段フィルタにおける利得と位相の関係
●普通のCRローパス・フィルタ---ラグ・フィルタを用いると不安定
●安定なPLLにはラグ・リード・フィルタ
コラム■シミュレーションにはSPICEが便利
第3章 PLL回路のループ・フィルタ設計法
パッシブ/アクティブ・ループ・フィルタの設計事例と検証
3.1 パッシブ・ループ・フィルタの設計
●ラグ・リード・フィルタのボーデ線図
●PLL回路とラグ・リード・フィルタを組み合わせたときの特性
●分周数が変化すると
●ループ・フィルタの定数を正規化グラフから求める--- Appendix Bを参照
3.2 10〜100kHz PLLシンセサイザのループ・フィルタ設計
●実験するシンセサイザのあらまし
●ループ・フィルタを除いた伝達特性を求める
●時定数:小,M=-10dB,位相余裕60°で設計する
●時定数:中,M=-20dB,位相余裕50°で設計する
●時定数:大,M=-30dB,位相余裕50°で設計する
●試作器の出力波形を見ると
●出力スペクトラムを観測すると
●ロック・スピードはどうなったか
3.3 アクティブ・ループ・フィルタを使うとき
●アクティブ・ループ・フィルタとは
●2次アクティブ・ループ・フィルタのボーデ線図はどうなるか
●3次アクティブ・ループ・フィルタ
●アクティブ・ループ・フィルタのノイズ
●アクティブ・ループ・フィルタの定数を正規化グラフから求める
3.4 25〜50MHz PLLシンセサイザのループ・フィルタ設計
●実際の回路でアクティブ・ループ・フィルタを設計する
●正規化グラフを使用し,ループ・フィルタの定数を求める
●時定数:小,M=0dB,位相余裕50°で設計する
●時定数:中,M=-10dB,位相余裕50°で設計する
●時定数:大,M=-20dB,位相余裕50°で設計する
●試作器によるデータ---出力波形
●出力スペクトラム
●ロック・スピードはどうなっているか
●ロック・スピードをシミュレーションする
3.5 位相余裕による特性の違い
●実験は50逓倍回路で
●ループ・フィルタの設計
●位相余裕が40°のとき
●位相余裕が50°のとき
●位相余裕が60°のとき
●シミュレーションで周波数特性を見る
●出力波形のスペクトラム
●ロック・スピードはどうなったか
●PLL回路の最適位相余裕は40°〜50°
コラム■周波数変動のようすを測定できるモジュレーション・ドメイン・アナライザ
第4章 4046と位相比較器のいろいろ
PLL回路に使用する定番デバイスの基礎知識
4.1 PLLの定番デバイスは4046
●PLLの入門は4046から
●4046にも三つのタイプがある
●74HC4046は位相比較器を3種類内蔵
●4046に内蔵されているVCOの特性
4.2 位相比較器の働きがポイント
●アナログ位相比較器
●ディジタル位相比較器
●位相周波数型比較器
●4046のPC2タイプ位相比較器
●デッド・ゾーン
●電流出力タイプ位相比較器
●高速位相比較器AD9901
第5章 電圧制御発振器VCOの回路技術
VCOに求められる特性とさまざまな発振回路の方式
5.1 VCOに要求される性能
●VCOのあらまし
●周波数可変範囲
●周波数制御の直線性
●出力ノイズ
●出力波形歪み
●電源電圧変動に対する安定度
●周囲温度変化に対する安定度
●外部磁界や振動による影響
5.2 弛張発振器によるVCOの構成
●ファンクション・ジェネレータの基本動作
●ファンクション・ジェネレータによるVCOの構成
●ファンクション・ジェネレータIC MAX038の利用
5.3 帰還発振器
●帰還発振器の基本動作
●帰還発振器を安定発振させる工夫
●RCによる帰還発振器の構成
●ステート・バリアブルVCO
5.4 高周波で利用するLC発振回路とVCOへの利用
●基本はハートレイ/コルピッツ発振回路
●コルピッツを改善したクラップ発振回路
●反結合発振回路
●LC発振器をVCOにする可変容量ダイオード
●市販されているLC発振VCO
5.5 その他のVCO
●振動子による帰還発振器
●遅延発振器
第6章 プログラマブル分周器の種類と動作
PLLシンセサイザを構成するためのディジタル回路
6.1 プログラマブル分周器の基本はダウン・カウンタ
●74HC40102/40103
●TC9198
6.2 プリスケーラ(prescaler)
●プリスケーラIC
●パルス・スワロウ方式
●フラクショナルN方式
6.3 PLL用のLSI
●PLL専用LSIの構成
●ADF4110/4111/4112/4113
第7章 PLL回路の計測と評価法
パッシブ/アクティブ・ループ・フィルタのループ利得
7.1 負帰還回路のループ利得の計測
●ループ利得の計測は難しい
●負帰還を施したままループ利得を計測
●負帰還ループ計測をシミュレーション
●実際に信号を注入するには
7.2 FRAを利用する
●負帰還ループ特性計測のためのFRA
●FFTとの違い
●ネットワーク・アナライザとの違い
7.3 PLL回路のループ利得測定
●バッシブ・ループ・フィルタを利用したPLL
●アクティブ・ループ・フィルタを利用したPLL
第8章 PLLの特性改善ノウハウ
信号純度やロック・スピードを向上させるテクニック
8.1 電源をきれいにする
●CMOSインバータ回路で実験してみると
●水晶発振回路で実験
●シリーズ・レギュレータの雑音特性を比較する
8.2 VCOの制御電圧特性を改善する
●CD74HC4046のVCOの直線性を改善する
●CD74HC4046のVCOの周波数可変範囲を広げる
8.3 VCOと位相比較器の干渉
●74HC4046はVCOと位相比較器が同居
●まずは74HC4046を1個で実験する
●74HC4046を2個使用し,VCOと位相比較器を分離する
8.4 位相比較器のデッド・ゾーン
●74HC4046でデッド・ゾーンの影響を実験する
●PC2とバリメガVCOを組み合わせる
●4046のPC1とバリメガVCOを組み合わせる
●74HCT9046とバリメガVCOを組み合わせる
8.5 ロック・スピードの改良
●ダイオードによるループ・フィルタ定数の切り替え
●アナログ・スイッチによるループ・フィルタ定数の切り替え
●D-Aコンバータによるプリセット電圧の加算
第9章 実用PLLシンセサイザの設計/製作
ループ・フィルタの詳細設計と実測特性で示す
9.1 74HC4046を使用したクロック・シンセサイザ
●実験などに便利な1Hz〜10MHzの水晶代用シンセサイザ
●回路構成の特徴---すべてCMOS ICを使用
●ループ・フィルタの設計
●出力波形
●スペクトラム
●ロック・スピード
9.2 TLC2933を使用したクロック・シンセサイザ
●TLC29xxシリーズのあらまし
●クロック・シンセサイザの回路
●ループ・フィルタを設計する
●出力波形のスペクトラムを計測
9.3 HFシンセサイザ
●HFシンセサイザの回路
●ループ・フィルタの定数を求める
●スペクトラム
●ロック・スピード
9.4 40MHz周波数基準信号用PLL
●40MHz周波数基準信号用PLLの回路
●ループ・フィルタの設計
●出力波形
9.5 低歪み低周波PLL
●低歪み低周波PLLの回路
●ループ・フィルタの設計
●出力波形の合成
Appendix B ループ・フィルタ設計のための正規化グラフ
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アナログPLLの設計ってトレードオフだから面白いのです
技術のトレンドとしてはやはり完全デジタルPLLなのでしょうが、アナログ視点でPLLを勉強し直してみるのは重要だと思います。本書はオーディオ~VHF用途という異なる周波数レンジを想定したPLL設計を対象としています。ループ・フィルタの解説に多くのページを割くのはアナログPLLのお約束という所でしょう。多くの具体例&シミュレーションを引用しフィルタ設計を検証するのにちょうど良い内容です。トレードオフの検討を楽しむには最適かも。続いて位相雑音の話に踏み込むのであれば、別シリーズの「高周波PLL回路のしくみと設計法」をおすすめします。
[2012/06/26][アナログ屋さん][東京都]