電流電圧変換回路で作るバッテリ電流モニタ




LTspice メール・マガジン全アーカイブs

■問題
【 演算回路 計測回路 LT6015 】

小川 敦 Atsushi Ogawa

 図1は,OPアンプ(LT6015)(1)とMOSFETで構成した電流電圧変換回路を使用したバッテリ電流モニタです.12Vのバッテリに負荷が接続されています.負荷に流れる電流が5Aだった場合,OUT端子の電圧は(a)~(d)のどれになるでしょうか.なお,LT6015の同相入力電圧範囲は「0V~+76V」となっており,電源電圧よりも高い電圧を入力することができます.


図1 OPアンプとMOSFETで構成した電流電圧変換回路を使用したバッテリ電流モニタ
負荷電流が5AのときのOUT端子の電圧は?

(a) 0.25V  (b) 0.5V  (c) 0.75V  (d) 1.0V

■ヒント

 OPアンプが正常に動作しているとき,非反転入力端子と反転入力端子の電圧が等しいことを踏まえて,MOSFETの電流をもとめ,OUT端子の電圧を計算してください.

■解答


(b) 0.5V

 OPアンプ(U1)は,非反転入力端子と反転入力端子の電圧が等しくなるように,M1の電流をコントロールします.その結果,M1の電流(IM1)は「IM1=IL×RS/R1」となります.OUT端子の電圧(VOUT)はIM1とR3を掛けたもので,次式となり,0.5Vとなります.

  VOUT=IL×RS×R3/R1=5×10m×2k/200=0.5V

■解説

●OPアンプとMOSFETで構成した電流電圧変換回路
 図2は,OPアンプとMOSFETで構成した電流電圧変換回路です.OUT端子には,抵抗(RS)に流れる電流に比例した,GND基準の電圧が出力されます.


図2 OPアンプとMOSFETで構成した電流電圧変換回路
OUT端子には,抵抗(RS)に流れる電流に比例した,GND基準の電圧が出力される.

 この回路で,負荷電流(IL)とOUT端子の電圧の関係を調べます.抵抗(RS)は電流検出抵抗で,ILを電圧に変換します.RSの両端電圧(VRS)は式1で表されます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

 OPアンプの入力バイアス電流をIinとすると,B点の電圧(VB)は電源(VBAT)からRSとR2の電圧降下を引いたものなので,式2で表されます.

・・・・・・・・・(2)

 抵抗(R1)にはM1のドレイン電流(IM1)が流れます.R1の電圧降下(VR1)は式3になります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)

 そしてA点の電圧は,VBATからR1の電圧降下を引いたものなので,式4になります.

・・・・・・・・・・・・・・(4)

 OPアンプ(U1)は,A点の電圧とB点の電圧が等しくなるように,M1の電流を制御します.そのため,式5が成立します.

・・・・・(5)

 ここで「R1=R2」とし,式5からIM1を求めると,式6が得られます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6)

 OUT端子の電圧(VOUT)はIM1とR3を掛けたものなので,式7になります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)

 式7から分かるように,VOUTはILに比例した電圧になります.式7に問題文の定数を代入すると,式8のようにILが5Aのとき,VOUTは0.5Vになることが分かります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・(8)

●電流電圧変換回路を検証する
 図3は,OPアンプとMOSFETで構成した電流電圧変換回路をシミュレーションするための回路です.使用しているOPアンプは,電源電圧よりも高い電圧が入力されても動作可能な「Over-The-Top入力段」を備えた,LT6015です.VBATの電圧は12Vで,OPアンプの電源電圧は5Vとなっています.電流源(IL)の電流を0から10Aまで0.1Aステップで変化させるシミュレーションを行います.


図3 OPアンプとMOSFETで構成した電流電圧変換回路をシミュレーションするための回路
電流源(IL)の電流を0から10Aまで0.1Aステップで変化させる.

 図4は,図3のシミュレーション結果です.OUT端子の電圧はILに比例して増加し,ILが5Aのときに0.5Vとなっています.図3の回路は,RSに流れる電流を,GND基準の電圧に,正確に変換できていることが分かります.


図4 OPアンプとMOSFETで構成した電流電圧変換回路のシミュレーション結果
OUT端子の電圧はILに比例して増加し,ILが5Aのときに0.5Vとなっている.

●Over-The-Top入力段の仕組み
 図5は,LT6015の仕様書に記載されている内部回路図をもとに作成した,簡略化したLT6015の入力部分の回路図です.LT6015は,電源電圧よりも高い電圧が入力可能なOver-The-Top入力段を備えています.


図5 簡略化したLT6015の入力部分の回路図
電源電圧よりも高い電圧が入力可能なOver-The-Top入力段を備えている.

 ここでは,図5の回路図を使用して,Over-The-Top入力段の仕組みを調べてみます.
 入力同相電圧が,OPアンプの「[V+]電圧-1.5V」以下のときは,電流源(I1)の電流は,PNPトランジスタ差動回路のQ1,Q2に流れ,この差動回路が動作します.このときは,Q1,Q2のベース電流がOPアンプの入力バイアス電流となり,2nA未満となります.
 入力同相電圧が,OPアンプの「[V+]電圧-1.5V」以上になると,電流源(I1)の電流は,Q9を経由し,Q11,Q12のカレントミラー回路に流れます.すると,Q3~Q6のエミッタ入力差動回路がアクティブになり,Q1,Q2に替わって動作します.Q3~Q6のエミッタ入力差動回路は,入力同相電圧がOPアンプの電源電圧よりも高くても動作することが可能です.
 ただし,入力同相電圧が,OPアンプの「[V+]電圧-1.5V」以上の場合は,Q3~Q6のエミッタ電流が入力バイアス電流となるため,14μAと非常に大きくなってしまうことに注意が必要です.

 以上,OPアンプとMOSFETで構成した電流電圧変換回路について解説しました.図1の回路のOPアンプに,Over-The-Top入力段を備えていないものを使用する場合は,OPアンプの電源を,バッテリ電圧以上とする必要があります.

◆参考・引用*文献
(1) LT6015データシート:アナログ・デバイセズ


■データ・ファイル

解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice12_021.zip

●データ・ファイル内容
Current_Sensing.asc:図3の回路
Current_Sensing.plt:図4のグラフを描画するためのPlot settingsファイル

■LTspice関連リンク先


LTspice ダウンロード先
LTspice Users Club
LTspice メール・マガジン全アーカイブs
 ◆ Season01 LTspice電子回路マラソン・アーカイブs
 ◆ Season02 LTspiceアナログ電子回路入門アーカイブs
 ◆ Season03 LTspice電源&アナログ回路入門アーカイブs
 ◆ Season04 IoT時代のLTspiceアナログ回路入門アーカイブs
 ◆ Season05 オームの法則から学ぶLTspiceアナログ回路入門アーカイブs
 ◆ Season06 LTspiceエデュケーショナル・ファイルで学ぶアナログ回路アーカイブs
 ◆ Season07 LTspiceドット・コマンドから学ぶアナログ回路アーカイブs
 ◆ Season08 LTspiceで始める実用電子回路入門アーカイブs
 ◆ Season09 LTspiceで学ぶオーディオ回路入門アーカイブs
 ◆ Season10 LTspiceとデータシートで学ぶ実践アナログ回路入門アーカイブs
 ◆ Season11 LTspiceとデータシートで学ぶ実践アナログ回路アーカイブs

トランジスタ技術 表紙

CQ出版社オフィシャルウェブサイトはこちらからどうぞ

CQ出版の雑誌・書籍のご購入は、ウェブショップで!


CQ出版社 新刊情報


近日発売

Interface 年間CD-ROM版

DVD-ROM版 Interface 2025

近日発売

トラ技 年間CD-ROM版

DVD-ROM版 トランジスタ技術 2025

CQ ham radio 2026年 4月号

アンテナチューナー実践運用ガイド

トランジスタ技術 2026年 4月号

半導体から丸見え!絵ときトランジスタ回路

別冊CQ ham radio QEX Japan No.58

巻頭企画 八重洲無線"FTX-1"のディープな活用法

アナログ回路設計オンサイト&オンライン・セミナ