マイコン搭載NPUを動かしてみる


写真1 NPU内蔵マイコンを搭載する開発ボードFRDM-MCXN947

インターフェース編集部 編

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 今回は,写真1に示すマイコン・ボードFRDM-MCXN947(NXPセミコンダクターズ)を使用して,AIの推論を行うNPUプログラムの開発を体験します.
 FRDM-MCXN947に搭載されているマイコンは,MCXN947(NXPセミコンダクターズ)です.最高150MHzで動作するCortex-M33を2つ搭載したデュアルコアCPUを内蔵するほか,アクセラレータ機能としてeIQ Neutron NPU(以降,NPU)などを備えています.
 NPUは,特に機械学習の推論動作を高速化するプロセッシング・ユニットです.機械学習のスループットは,CPU単体と比較して最大42倍です.今回は,このNPUを使うプログラムを作成し,実際にFRDM-MCXN947で動かす手順を紹介します.
 本記事で紹介する手順は,次のウェブ・ページを元にしています.
[入門]MCX N947:AI/ML画像認識サンプルコード実装 (日本語ブログ),NXP Tech Blog

■[1] 開発環境の準備

●ハードウェアの入手

 写真1に示すマイコン・ボードFRDM-MCXN947(NXPセミコンダクターズ)を用意します.NXPセミコンダクターズのウェブ・ページより購入できます.
MCX N94/N54 MCU用FRDM開発ボード


●統合開発環境のインストール

 本記事では,開発用PCにWindows 11マシンを使用する前提で解説を行います.次のウェブ・ページより統合開発環境のインストーラをダウンロードします.
MCUXpresso統合開発環境 (IDE)
 ダウンロードが完了したらインストーラを実行します.指示に従ってインストールします.

■[2] SDKのダウンロードとインストール

●手順1…ダウンロード

 次のウェブ・ページにアクセスします.
MCUXpresso SDK Builder
 トップ・ページが表示されたら,[Select Development Board]をクリックします.次に,図1のように「mcxn947」を検索窓に入力し,FRDM-MCXN947を選択した後,[Build MCUXpressoSDK]をクリックします.


図1 MCUXpresso SDK Builderのボード選択画面…FRDM-MCXN947を選択する

 すると図2のようにホストOSや統合開発環境の種類などを設定する画面が表示されます. ここでは,ホストOSにWindows 11が選ばれていることと,「eIQ」にチェックが入っていることを確認して,[BUILD SDK]をクリックします.


図2 MCUXpresso SDK BuilderのSDK設定画面

 図3の画面が表示されるので,[Download]をクリックします.
 すると,ライセンスに関する同意に関する内容が表示されるので,[AGREE]をクリックします.するとダウンロードが開始されます.ダウンロードが完了すると,SDK_XX_XX_XX_FRDM-MCXN947.zip(XX_XX_XXはバージョン番号)というファイル名で保存されます.


(a) 確認画面

(b) [Download SDK Archive]を選択する
図3 ビルド対象のSDKの確認画面


●手順2…MCUXpresso IDEにSDKをインストール

 Windowsのスタート・メニューからMCUXpresso IDEを起動します.起動時にワークスペースの場所を聞かれるので,ここでは適当な場所にMCXN9-FRDM_eIQ_HandsOnという名前のワークスペースを作成したとして説明します.

▼(1) ダウンロードしたファイルのドラッグ&ドロップ
 MCUXpresso IDEを起動して,Welcome画面を閉じると,ワークスペース画面が表示されます.画面中央下に,図4のように「Installed SDKs」タブが表示されているので,ここにダウンロードしたSDK_XX_XX_XX_FRDM-MCXN947.zipをドラッグ&ドロップします.


図4 ダウンロードしたSDKファイルをMCUXpresso IDEにドラッグ&ドロップする


▼(2) サンプル・プロジェクトの選択
 ワークスペース画面の左側にある「Project Explorer」タブを選択し,[Import SDK example(s)…]をクリックします.すると,図5のように「SDK Import Wizard」が表示されるので,[frdmmcxn947]を選択して[Next]をクリックします.


図5 SDK Import Wizardのボード設定画面…frdmmcxn947を選択する


 すると図6の画面が表示されるので,eiq_examplesのtflm_label_image_cm33_core0を選択し,[Finish]をクリックします.SDKのインストールが正常に完了すると図7のような画面が表示されます.
 このサンプル・プロジェクトでは,プロジェクト内の画像ファイルstopwatch.bmpに対し,画像の内容がストップウォッチである確率が何%なのかを,機械学習で推論します.


図6 SDK Import Wizardのサンプル選択画面


図7 SDKインストール後のワークスペース画面


■[3] プロジェクトのビルドと書き込み

●手順1…ビルド

 図8に示す[Build]アイコンをクリックして,プロジェクトをビルドします.ビルドが正常に完了すると,図9のような画面が表示されます.


図8 プロジェクトのビルド


図9 ビルドが正常に完了した様子


●手順2…書き込み

▼(1) ボードとPCを接続
 図10のように,開発用PCとFRDM-MCXN947を接続します.FRDM-MCXN947のJ17(MCU-LINK)と開発用PCをUSBケーブルで接続します.


図10 開発用PCとマイコン・ボードFRDM-MCXN947の接続

▼(2) 書き込み&デバッガ起動
 図11に示す[Debug]アイコンをクリックして,プロジェクトをマイコン・ボードに書き込みます.正常に書き込みが完了すると,図12のようにデバッガが起動します.


図11 デバッガを起動する[Debug]アイコン


図12 書き込みが正常に完了しデバッガが起動した様子


▼(3) USB-UARTシリアル通信の設定
 Tera Termなどのターミナル・ソフトウェアを使用して,FRDM-MCXN947とシリアル通信を行います.次のように設定します.Tera Termでの設定例を図13に示します.

・ボーレート:115200bps
・データ:8ビット
・パリティ:なし
・ストップ・ビット:1ビット
・フロー制御:なし


図13 シリアル通信の設定内容


▼(4) プログラムの実行
 図14に示す[Resume]アイコンをクリックして,プログラムを実行します.すると,ターミナル画面に図15のように表示されます.
 入力画像が85%の確率でstopwatchと推論していて,その推論時間が12718μs(12.7ms)であることを示しています.


図14 デバッガでプログラムの実行を開始する[Resume]アイコン


図15 サンプル・プログラムを実行したときのターミナル(Tera Term)画面


* * *

 今回は用意されているサンプル・プロジェクトを実行して,NPUを動かしてみました.次回は,eIQというツールを使って,新たなモデルを作成する手順を解説します.

◆参考文献◆

(1) [入門]MCX N947:AI/ML画像認識サンプルコード実装 (日本語ブログ),NXP Tech Blog
(2) 中森 章;特集 第4部 第1章マイコンではじめるNPUプログラミング,Interface2025年6月号,CQ出版社.

本記事に記載されている社名,および製品名は,一般に開発メーカの登録商標,または商標です.


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