白色LEDドライバICの動作




LTspice メール・マガジン全アーカイブs

■問題
【 LT3465 】

小川 敦 Atsushi Ogawa

 図1は,LEDドライバICのLT3465を使用して,4個の白色LEDを点灯させるための回路です.電源は,3.7Vのリチウム・イオン電池を使用し,SW1で点灯と消灯を,またSW2で点灯する個数をコントロールします.
 SW2がOFFの状態で4個のLEDを点灯させたとき,FB端子の電圧は0.2Vで,VOUT端子の電圧は,13.3Vでした.次に,SW2をONの状態にして,3個のLEDを点灯させました.
 このとき,VOUT端子の電圧として最も近いのは,(a)~(d)のどれでしょうか.なお,4個のLEDの特性はすべて等しいものとします.



図1 LEDドライバICのLT3465を使用した白色LED点灯回路
SW2をONの状態にしたときのVOUT端子の電圧は?

(a) 13.3V (b) 10.0V (c) 9.8V (d) 9.6V

■ヒント

 LT3465は,FB端子の電圧が常に0.2VとなるようVOUTの電圧をコントロールし,LEDに流れる電流を一定の値にします.これを踏まえて,LEDの1個あたりの電圧を計算すれば,答えは簡単に分かります.

■解答


(b) 10.0V

 4個のLEDを点灯させたときのVOUT端子の電圧が13.3Vで,FB端子の電圧が0.2VなのでLEDの1個あたりの電圧は,(13.3-0.2)/4と計算できます.3個のLEDを点灯させたときのVOUT端子の電圧(VOUT)は,4個のLEDを点灯させたときの電圧から,1個のLEDの電圧を引いたものなので,「VOUT=13.3-(13.3-0.2)/4=10.025」と計算できます.そのため,正解はbの10.0Vとなります.

■解説

●白色LEDの電圧電流特性
 図2は,NSPW500BSという品番の白色LEDの,印加電圧と電流のグラフです.一般的なダイオードは,0.6V程度の電圧を加えると電流が流れ始めます.しかし,白色LEDは,2.5V以上の電圧を加えないと,電流が流れません.また,図2より,このLEDに20mAの電流を流すためには,3.3Vの電圧を印加する必要があることが分かります.


図2 白色LED(NSPW500BS)の,印加電圧と電流のグラフ
白色LEDは2.5V以上の電圧を加えないと,電流が流れない.

●抵抗を使用した白色LEDの点灯回路
 図3は,3.7Vのリチウム・イオン電池を使用して,複数のLEDを点灯させる回路として考えました.


図3 リチウム・イオン電池を使用して複数のLEDを点灯させる回路例
この回路は,リチウム・イオン電池の電圧が変動すると,LED電流が大きく変動してしまう

 リチウム・イオン電池の電圧をVLiとし,LEDに流す電流をILED,その電流が流れるときのLEDの電圧をVLEDとします.すると,LEDに直列に挿入する抵抗(R)は式1で計算することができます.ここで,ILEDを20mAとすると,Rは20Ωとなります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

 ただし,この回路には2つの問題があります.1つ目は,LED電流のばらつきです.それぞれのLEDの順方向電圧がばらついた場合,LEDごとに流れる電流がばらついてしまいます.2つ目は,リチウム・イオン電池の電圧が変動すると,LED電流が大きく変動してしまうということです.リチウム・イオン電池の充電直後の電圧が4.1Vで,電池残量0と判定する電圧を3.2Vとすると,リチウム・イオン電池の電圧は,3.2Vから4.1Vまで変動することになります.
 図4は,図3でリチウム・イオン電池の電圧が3.2Vから4.1Vまで変動したときの,LED電流をシミュレーションしたものです.LEDの電流は7.4mAから32.5mAまで大きく変動しています.


図4 図3でリチウム・イオン電池の電圧が変動したときの,LED電流のシミュレーション結果
LED電流は,7.4mAから32.5mAまで大きく変動している

●LT3465を使用した白色LEDの点灯回路
 図5は,LEDドライバICのLT3465を使用したLED点灯回路をシミュレーションするための回路です.


図5 LEDドライバICのLT3465を使用したLED点灯回路
LEDが直列接続されているため,すべてのLED電流は同じになる.

 4個のLEDが直列に接続されています.LEDを直列接続することにより,LEDの順方向電圧がばらついても,すべてのLEDの電流は同じになります.
 LT3465は,昇圧回路として動作し,VOUT端子には昇圧された電圧が出力されます.そして,FB端子の電圧(VFB)が0.2Vとなるよう,VOUT端子の電圧をコントロールします.
 FB端子とGND間に接続された抵抗(R1)にLED電流(ILED)が流れるため,ILEDは式2で表されます.図5の定数ではILEDは20mAとなります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)

 図6は,図5の回路でリチウム・イオン電池の電圧(VLi)を,3.2Vと4.1Vに変化させたときのLED電流のシミュレーション結果です.


図6 リチウム・イオン電池の電圧を変化させたときのLED電流のシミュレーション結果
VLiが3.2Vのときも4.1Vのときも,LED電流は約19.3mAとなっている

 VLiが3.2Vのときも4.1Vのときも,LED電流は約19.3mAとなっており,リチウム・イオン電池の電圧が変動しても,LED電流は一定となっています.

●LEDの個数を変えたときの動作
 図7は,LT3465を使用した白色LED点灯回路です.LEDの個数を変えたときの動作をシミュレーションします.


図7 LEDの個数を変えたときの動作をシミュレーションするための回路
SW2をON/OFFさせ,LED4個点灯ときと,LED3個点灯時をシミュレーションする.

 SW2がOFFでLEDを4個点灯させたときと,SW2がONで,LEDを3個点灯させたときの状態をシミュレーションします.LEDの電圧をVLED,個数をnとし,FB端子の電圧をVFBとすると,VOUT端子の電圧(VOUTn)は式3で表されます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)

 LT3465は,VFBが0.2Vになるよう,SW端子のオン・デューティ比を制御することで,式3が成立するよう,VOUTをコントロールします.式3を変形してLEDの電圧を求めると,式4になります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)

 そして「n=4」のときのOUT端子の電圧をVOUT4とすると「n=3」のときのOUT端子の電圧VOUT3は式5で計算することができます.

・・・・・・・・・・・・・・・(5)

 図8図7の回路で,LEDの個数を変えたときの動作のシミュレーション結果です.


図8 図7の回路で,LEDの個数を変えたときの動作のシミュレーション結果
LEDの個数を変えてもLED電流は変わらず,VOUT端子の電圧は個数に対応して変化

 上段がVOUT端子の電圧で,下段がLED電流です.それぞれ,青線が4個のLEDを点灯させたときの特性で,赤線がLEDを3個を点灯させたときの特性です.LEDの個数を変えてもLED電流は19.3mAで変わりません.LEDを4個点灯させたときのVOUT端子の電圧は13.3Vで,3個点灯させたときのVOUT端子の電圧は10.0Vとなっています.

●LT3465の調光機能をシミュレーションする
 LT3465には,LEDの明るさをコントロールするための調光機能があります.図9はこの調光機能をシミュレーションするための回路です.CTRL端子の電圧を2Vから0Vまで変化させ,LED電流の変化をシミュレーションします.


図9 LT3465の調光機能をシミュレーションする回路
CTRL端子の電圧を2Vから0Vまで変化させ,LED電流の変化をシミュレーションする.

 図10図9のLT3465の調光機能のシミュレーション結果です.


図10 LT3465の調光機能のシミュレーション結果
CTRL端子の電圧が1V以下になると,LED電流が減少していく.

 上段がCTRL端子の電圧で,下段がLED電流です.CTRL端子の電圧が1V以下になると,CTRL端子の電圧低下に合わせてLED電流が減少しています.このように,CTRL端子の電圧によってLEDの明るさをコントロールすることができます.
 以上,LEDドライバICのLT3465の動作について解説しました.LT3465の詳しい使い方については,LT3465の仕様書を参照してください.


◆参考・引用*文献
アナログ・デバイセズ:LT3465のデータシート


■データ・ファイル

解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice10_007.zip

●データ・ファイル内容
LED_VI.asc.asc:図2をシミュレーションするための回路
4LED_R.asc:図3の回路
LT3465_4LED.asc:図5の回路
LT3465_4LED_3LED.asc:図7の回路
LT3465_4LED_3LED.plt:図8のグラフを描画するためのPlot settinngsファイル
LT3465_4LED_dimm.asc:図7の回路
LT3465_4LED_dimm.plt:図8のグラフを描画するためのPlot settinngsファイル

■LTspice関連リンク先


(01) LTspice ダウンロード先
(02) LTspice Users Club
(03) LTspice メール・マガジン全アーカイブs
(04) ◆LTspice電子回路マラソン・アーカイブs
(05) ◆LTspiceアナログ電子回路入門アーカイブs
(06) ◆LTspice電源&アナログ回路入門アーカイブs
(07) ◆IoT時代のLTspiceアナログ回路入門アーカイブs
(08) ◆オームの法則から学ぶLTspiceアナログ回路入門アーカイブs
(09) ◆LTspiceエデュケーショナル・ファイルで学ぶアナログ回路アーカイブs
(10) ◆LTspiceドット・コマンドから学ぶアナログ回路アーカイブs
(11) ◆LTspiceで始める実用電子回路入門アーカイブs

トランジスタ技術 表紙

CQ出版社オフィシャルウェブサイトはこちらからどうぞ

CQ出版の雑誌・書籍のご購入は、ウェブショップで!


CQ出版社 新刊情報


近日発売

Interface 2025年 4月号

Pythonで学ぶ制御

別冊CQ ham radio QEX Japan No.54

巻頭企画 "FreeDV"最新ガイド

CQ ham radio 2025年 3月号

アンテナチューナー活用ガイド2025

Interface 2025年 3月号

仕事のための生成AI

CQ ham radio 2025年 2月号

アマチュア無線 オペレーションガイド2025

アナログ回路設計オンサイト&オンライン・セミナ