電圧2倍,電力4倍のブリッジ接続アンプ
図1は,OPアンプ(U1,U2:LT1057)とバッファ・アンプ(U3,U4:LT1010)を使用したブリッジ接続のアンプです.OUT1とOUT2の間に20Ωの負荷抵抗(Rload)が接続されています.ここで,IN端子にピーク電圧1Vで1kHzの正弦波信号を加えた場合,INやOUT1,OUT2の波形として正しいのは図2の(a)~(d)のどれでしょうか.
LTspiceのサンプルファイル(ドキュメント\LTspiceXVII\examples\jigs\1057.asc)より
IN,OUT1,OUT2の波形として正しいのは(a)~(d)のどれ?
(a)の波形 (b)の波形 (c)の波形 (d)の波形
ブリッジ接続のアンプは,同じ電源電圧で使用した場合,通常のアンプ(シングル・アンプ)に比べて,負荷に加わる電圧を2倍にできます.これにより,電力は電圧の2乗に比例するため負荷で発生する電力は4倍になります.
図1のバッファ・アンプ(U3,U4)は,OPアンプの出力駆動能力を増大させるもので,入力と出力の位相は同じです.U3とU4は,OPアンプの帰還ループの中に入っています.そのOPアンプで構成された回路の入力と出力の位相がどのようになるかを考えれば答えが分かります.
OPアンプ(U2)とバッファ・アンプ(U3)はゲイン1の非反転アンプを構成しています.また,OPアンプ(U1)とバッファ・アンプ(U4)は,ゲイン1の反転アンプを構成しています.そのため,OUT1の波形は,IN端子と同位相になり,OUT2の波形はIN端子の逆位相になります.そのような波形となっているのは(a)なので,正解は(a)ということになります.
●シングル・アンプの確認
図3は,図1の非反転アンプのみを取り出したもので,シングル・アンプとなっています.図1のR2とC2は動作を安定にするための位相補償の働きをしますが,図2では省略しています.また,負荷抵抗(Rload)は,片側をGNDに接続しています.V3の振幅は,ピーク電圧1.5Vから2Vまで0.1Vステップで変化させるように設定しています.
位相補償の働きするR2とC2は省略している.
図4は,図3の非反転アンプのシミュレーション結果です.入力が大きくなると,波形の下側がクリップしはじめています.そのため,クリップしない最大出力は3.2VPP程度となります.
クリップしない最大出力は3.2VPP程度.
●ブリッジ接続アンプの確認
図5は,図1の回路を簡略化して書き換えたもので,図3の回路に反転アンプを追加したものになっています.
図3の回路に反転アンプを追加している.
OPアンプ(U1)とバッファ・アンプ(U4)で反転アンプを構成しており,そのゲインは「R3/R1」となります.図5ではどちらも10kΩなので,ゲインは1です.負荷抵抗(Rload)は,OUT1とOUT2に接続されているため,OUT1とOUT2の差電圧(VRload)がRloadに加わることになります.これを式で表すと「VOUT1=VIN」で「VOUT2=-VIN」なので,OUT1とOUT2の差電圧は,式1となり電圧が2倍と分かります.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
図6は,図5のシミュレーション結果です.「.step解析」の結果の中から,クリップ直前の波形だけを表示しています.下段がOUT1とOUT2の波形ですが,互いに逆位相となっています.上段がOUT1とOUT2の差電圧で,この電圧がRloadに加わります.OUT1とOUT2が逆位相となっているため,差電圧のピーク電圧は,それぞれのピーク電圧の2倍の6.4VPPになっています.
クリップしない最大出力はシングル・アンプの2倍になっている.
図7は,図1のシミュレーション結果です.OUT1の波形は入力(IN)と同位相となっており,OUT2は入力とは逆位相となっています.これは図2の(a)と同じ結果です.
図2の(a)と同じ結果となっている.
以上ブリッジ接続のアンプについて解説しました.ブリッジ接続のアンプは通常のアンプの2倍の電圧出力が得られます.電力は,電圧の2乗に比例するため,負荷で発生する電力が4倍になります.そのため,ブリッジ接続のアンプは,BTL(Bridge Tied Load)アンプという名前でオーディオ・アンプによく使用されています.
解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice6_031.zip
●データ・ファイル内容
1057_M.asc:図1の回路
Single.asc:図3の回路
1057Brige_Amp.asc:図5の回路
1057Brige_Amp.plt:図6のグラフを描画するためのPlot settinngsファイル
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