バリキャップ(varicap)の使い方



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■問題
LTspiceの使用方法 ― 初級

小川 敦 Atsushi Ogawa

 図1は,バリキャップ(MV2201)を使用して共振周波数を可変できるようにしたLC共振回路です.(a)~(d)の中で,バリキャップの使い方が間違っているのはどれでしょうか.


図1 共振周波数を可変できるようにしたLC共振回路
バリキャップの使い方が間違っているのは(a)~(d)のどれでしょうか?

(a)の回路 (b)の回路 (c)の回路 (d)の回路


■ヒント

 バリキャップは,加える電圧によって静電容量が変わる素子です(図2).バリキャップはダイオードの逆バイアス電圧を変化させることで,静電容量を変化させます.バリキャップに加わる逆バイアス電圧を変化させることができる回路はどれかを考えれば,答えは簡単に分かります.


図2 バリキャップの回路記号
■解答


(d)の回路

 コイルの直流抵抗は,非常に小さいため,(d)の回路ではバリキャップに加わる逆バイアス電圧は非常に小さく,Vtが変わってもほとんど変化しません.そのため,静電容量値もほとんど変化せず,共振周波数を変化させることができないため,間違ったバリキャップの使い方,ということになります.

■解説

●バリキャップの印可電圧と静電容量の関係
 一般のダイオードは,順方向に電圧を印可したときに電流が流れ,逆方向に電圧を印可したときは,電流が流れません.そして,逆方向に電圧を印可した場合,印可する電圧によって静電容量が若干変化します.バリキャップは,逆方向に印可する電圧によって,静電容量が大きく変化するような構造にしたダイオードです.そのため,順方向に電圧を印可すると一般的なダイオード同様電流が流れるため,逆方向に電圧を印可して使用します.バリキャップは,バラクタ(Varactor)や可変容量ダイオードとも呼ばれます.

●LTspiceに登録されているバリキャップ
 図3は,LTspiceに登録されているバリキャップの1つである,MV2201の印可電圧と静電容量の関係を調べるための回路です.


図3 バリキャップの静電容量と印可電圧の関係を調べるための回路
V1の電流の実部と虚部から容量値を計算している.

 LTspiceでバリキャップを使用する場合,コンポーネント選択画面で直接「varactor」を選択するか,通常のダイオードを配置した後「Pick New Diode」からtypeが「varactor」となっている型番のダイオードを選択します.すると,シンボルも自動的に「varactor」に変わります.LTspiceには,KV1471とMV2201の2種類のバリキャップが登録されています.
 バリキャップの等価回路をコンデンサと抵抗の直列回路とみなした場合,容量値は,交流電源からバリキャップに流れ込む電流(i)の,実部と虚部から式1のように計算することができます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

 バリキャップに流れ込む電流は,V1の電流の符号を反転したものなので,式1をLTspiceの書式で記述すると, C=im(-i(V1))/(2*pi*frequency)*(1+re(-i(V1))**2/im(-i(V1))**2 となります.
 図3では「.meas」コマンドを使用して10MHzのときの容量値を求めてCapという変数に代入しています.そして,V1の直流電圧を0Vから10Vまで0.2Vステップで変化させ,印可電圧に対する容量値の変化を調べます.
 図4図3のシミュレーション結果で,MV2201の印可電圧と静電容量の関係を表すグラフです.このグラフを表示させるには,図3の回路でシミュレーションを実行した後,Ctrl+Lキーを押して,SPICE Error Logを表示します.そして,そのウインドウの中でマウス右ボタンをクリックし,表示されたメニューから「Plot.step'ed.meas data」を選択します.図4を見ると分かるように,バリキャップは印可電圧が高くなると容量値は小さくなります.


図4 MV2201の印可電圧と静電容量の関係を表すグラフ
印可電圧が高くなると容量値は小さくなる.

●バリキャップを使用したLC共振回路のシミュレーション
 図5は,図1の回路を同時にシミュレーションできるように1つにまとめたものです.バリキャップに印可する電圧を1V,5V,10Vと変えて周波数特性をシミュレーションします.
 (a)は,最も一般的なバリキャップの使い方です.コンデンサC1はバリキャップに印加した電圧が,コイルでショートされないようにするための,直流カット用のコンデンサです.
 (b)は,(a)のバリキャップとコンデンサを入れ替えたものです.しかし,動作は(a)と全く同じになります.
 (c)は,バリキャップを2個使用しています.このように接続すると信号電圧によって発生するバリキャップの容量変化を打ち消すことができます.
 (d)は,バリキャップに印可した電圧がコイルによって直流的にショートされてしまうため,共振周波数が変化しません.


図5 バリキャップを使用したLC共振回路のシミュレーション用回路
バリキャップに印可する電圧を1V,5V,10Vと変えて周波数特性をシミュレーションする.

 図6図5のシミュレーション結果です.(a),(b),(c)の回路はバリキャップの印可電圧を変えることで共振周波数が変化していることが分かります.しかし,(d)の回路は印可電圧を変えても共振周波数は変化していません.


図6 バリキャップを使用したLC共振回路のシミュレーション結果
(d)の回路は印可電圧を変えても共振周波数は変化していない.

●バリキャップを使用したバンド・パス・フィルタのシミュレーション
 図7は,LTspiceのサンプルファイル(ドキュメント\LTspiceXVII\examples\Educational\varactor.asc)です.バリキャップとトランスを組み合わせたバンド・パス・フィルタとなっています.


図7 LTspiceのサンプルファイル( varactor.asc)
バリキャップとトランスを組み合わせたバンド・パス・フィルタとなっている.

 図8図7のバリキャップとトランスを組み合わせたバンド・パス・フィルタのシミュレーション結果です.バリキャップに加える電圧によって,通過周波数が変化していることが分かります.


図8 バリキャップとトランスを組み合わせたバンド・パス・フィルタのシミュレーション結果
バリキャップに加える電圧で通過周波数が変化していることが分かる.

■データ・ファイル


解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice6_009.zip

●データ・ファイル内容
IMV2201_CV.asc:図3の回路
LCresonant_cir_abcd.asc:図5の回路
varactor.asc:図7の回路
varactor.plt:図8のグラフを描画するためのPlot settinngsファイル

■LTspice関連リンク先


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