光センサを使用した自動点灯回路



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■問題
アナログ回路 ― 基礎

小川 敦 Atsushi Ogawa

 図1は,CDSセル(光センサ)を使用した,LEDの自動点灯回路です.CDSで周囲の明るさを検知し,明るいときはLEDが消灯し,暗くなったときに自動的にLEDが点灯する回路です.このような動作をする回路は,(a)~(d)のどれでしょうか.


図1 CDSセルを使用した,LED自動点灯回路
暗くなったときに自動的にLEDが点灯する回路は?

(a)の回路 (b)の回路 (c)の回路 (d)の回路


■ヒント

 CDSセルは,硫化カドミウムと硫黄の化合物を主成分とする素子で,周囲の明るさによって抵抗値が大きく変化します.明るいときに抵抗値が小さくなり,暗くなると抵抗値が大きくなります.この性質を考えれば,答えは簡単にわかります.

■解答


(a)の回路

 LEDが点灯するためには,トランジスタがONする必要があります.また,トランジスタがONするのは,ベース・エミッタ間に,一定値(0.6~0.7V)以上の電圧が加わったときです.4つの回路はいずれも抵抗分圧でベース・エミッタ間電圧が決まります.
 しかし,暗いとき(CDSセルの抵抗値が大きいとき)にベース・エミッタ間電圧が大きくなり,明るいときにベース・エミッタ間電圧が小さくなる接続となっているのは(a)の回路です.

■解説

●CDSセルを使用した自動点灯回路の動作
 CDSセルは,光が当たっていないときは,1MΩ程度と非常に抵抗値が大きく,光が当たると数kΩ程度まで抵抗値が小さくなります.図2は,図1(a)に定数を定め,LED電流をシミュレーションする回路です.


図2 図1(a)に定数を定めた自動点灯回路
RCDSの値を1kΩから1MΩまで変化させたときの,LED電流をシミュレーションする.

 LEDは白色LEDのNSPW500BSを使用しています.LEDが点灯するのはトランジスタがONしたときです.そのときLEDに流れる電流(ILED)は,式1で概算できます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

 VLEDは,LEDの順方向電圧で,3.2Vとしています.また,この回路のB点(トランジスタのベース)の電圧は,トランジスタのベース電流が無視できる範囲では,式2で計算することができます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)

 ここで,トランジスタがONする電圧を0.7Vとすると,トランジスタがONするCDSの抵抗値は,式2を変形して式3のように求めることができます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)

 つまり,この回路は周囲が暗くなって,CDSの抵抗値が7.7kΩ以上になったときにLEDが点灯することになります.この動作を確かめるため,RCDSの値を1kΩから1MΩまで変化させ,LED電流がどのように変化するかを図2でシミュレーションします.
 図3は,図2のシミュレーション結果です.RCDSが小さいときはLEDには電流が流れず,およそ7kΩ以上になると電流が流れていることがわかります.つまり,明るいときはLEDは消灯していおり,周囲が暗くなってCDSセルの抵抗値が大きくなると,LEDが点灯することになります.


図3 CDSセルを使用したLEDの自動点灯回路のシミュレーション結果
CDSの抵抗値が大きくなるとLEDが点灯する.

●大きなLED電流が流せる自動点灯回路
 図2の回路では,R2を極端に小さくしても,LEDの電流をそれほど大きくすることはできません.トランジスタは,ベース電流のhfe倍以上のコレクタ電流を流すことができないためです.Q1のベース電流はR1によって「(5-0.7)/47k=90μA」程度に制限されます.hfeを200とすると,LED電流は18mA程度までしか流せないことになります.照明として使用するためには,LEDに大きな電流を流す必要がありますが,そのようなときは,図4のような回路を使用します.


図4 大きなLED電流が流せる自動点灯回路
Q2を追加したダーリントン接続トランジスタを使用する.

 図4でLEDは,大電流を流すことのできる,LXHL-BW02に変更しています.また,Q1のベースにエミッタが接続されたQ2が追加されています.このようなトランジスタの接続のしかたをダーリントン接続と呼びます.ダーリントン接続したトランジスタは,hfeの非常に大きなトランジスタとして動作し,そのhfeは単体トランジスタのhfeを2乗したものになります.ただし,ベース・エミッタ間電圧は単体トランジスタの2倍の1.2V~1.4Vになり,スイッチとして動作させたとき,コレクタ・エミッタ間の残り電圧が0.7V程度発生します.
そのため,LED電流と,トランジスタがONするCDSの抵抗値の計算式が若干変わり,図4の定数を式4に代入すると,電流(ILED)が概算できます.

・・・・・・・・・・・・・(4)

 また,図4の定数を式5に代入するとCDSの抵抗値は14kΩとなります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)

 なので,図4の定数では,CDSの抵抗値が14kΩ以上でLEDが点灯することになります.また,R1の値を変えることで,どれくらい暗くなったらLEDを点灯させるかを変更することができます.
 図5は,図4のダーリントン接続したトランジスタを使用した自動点灯回路のシミュレーション結果です.330mA程度の大きなLED電流を流すことができています.


図5 ダーリントン接続したトランジスタを使用した自動点灯回路
330mA程度の大きなLED電流を流すことができている.

 今回は,CDSセルを使用した自動点灯回路について解説しました.CDSセルは光量による抵抗値の変化が非常に大きく,回路をシンプルにできるというメリットがあります.しかし,カドミウムを含有しているため,欧州連合(EU)への輸出品には使用できないなど,注意が必要です.


■データ・ファイル

解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice5_039.zip

●データ・ファイル内容
CDS_LED.asc:図2の回路
CDS_LED.plt:図3のグラフを描画するためのPlot settinngsファイル
CDS_LED_Darlin.asc:図4の回路
CDS_LED_Darlin.plt:図5のグラフを描画するためのPlot settinngsファイル

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