LEDの種類と特性
図1は,5V電源で白色LEDを点灯させるための回路です.この回路で,LEDに流れる電流を約20mAとするための抵抗(R1)の値として適切なのは次の(a)~(d)のどれでしょうか.なお,使用しているLEDは表1のような仕様のものとします.
LEDに流れる電流を約20mAとするための抵抗値は?
(a)220Ω (b)150Ω (c)92Ω (d)22Ω
まず,LEDに流れる電流が約20mAとなる抵抗値を計算するために,どのような情報が必要かを考えます.その情報が表1のどの項目かがわかれば,抵抗値は簡単に計算できます.
抵抗値を計算するために必要な情報は「順電圧」です.特性欄の順電圧(VF)の項目を見ると,順電流(IF)が20mAのときに3.2Vであることが分かります.LEDに流れる電流が20mAとなる抵抗の値は,電源電圧から順電圧を引いたものをLED電流で割ることで求めることができます.「R1=(5-3.2)/20m=90」となるので,この値に最も近いのはCの92Ωということになります.
●LEDの色と特性
LED(Light Emitting Diode)はダイオードの1種です.電流を流すことでさまざまな色で発光します.構造は,一般的なダイオードと同じで,N型半導体とP型半導体を組み合わせたものです.しかし,一般的なダイオードがシリコンを素材とするのに対し,LEDは,化合物半導体が使われます.使われる化合物半導体は発光色によって異なり,一例として,赤外線ではGaAs(ガリウム・ひ素)が,赤色はInGaAlP(インジウム・ガリウム・アルミニウム・リン)が,青色ではInGaN(インジウム・ガリウム・窒素)などが使用されています.
また,LEDは電流を流したときの電圧が,一般的なダイオードよりも大きくなります.一般的なダイオードの電流を流したときの電圧が0.6V~0.7Vであるのに対し,赤外線LEDは1.4V程度で,青色LEDは3.1V程度というように,発光色によって異なります.白色LEDの多くは,青色LEDをベースに,蛍光体で他の色を発光させて白色に見えるようにしているため,電流を流したときの電圧は青色LEDと同等のものが多いようです.
●LEDの仕様書の見方
表1は,LEDの仕様書の一部を抜粋したものです.この中の絶対最大定格は,他の半導体と同様,その値を越えて使用すると,デバイスが破壊してしまう可能性がある,という規格です.表1の順電流(IF)は発光させるために順方向に流す電流のことで,パルス順電流(IFP)は別途定義されたパルス幅で駆動したときに,越えてはいけない順方向電流のことです.また,逆電圧(VR)は,LEDに加えてはいけない逆方向の電圧を表しています.この電圧があまり高くないため,一般的にLEDに交流電圧を加えることは望ましくありません.
表1の特性の中の順電圧(VF)は,LEDを発光させたときの順方向電圧のことです.流す電流によって若干変化するため,条件としてIFの大きさを定義しています.この製品は,20mAの電流を流したときの順方向電圧の標準値は3.2Vであることが分かります.
次の行の光度はLEDの明るさを表しており,単位はcd(カンデラ)です.この明るさも流す電流によって変わるため,条件としてIFの大きさを定義しています.
なお,明るさを表す別の単位としてlm(ルーメン)がありますが,ルーメンはすべての方向の光の総量で,カンデラは特定方向の光の強さを表しています.そのため,同じLEDでも,レンズ等で指向性を強くした場合,カンデラの値は大きくなります.一般的に照明器具ではルーメンが使用され,LED単体では,カンデラが使用されています.
●電流制限抵抗の値の計算
LEDの電流を特定の値にしたいとき,もっともシンプルな方法は図1のように,電源(V1)とLEDの間に抵抗を挿入します.この抵抗のことを電流制限抵抗と呼びます.
次に必要な明るさからLEDに流す電流値(IF)を決めます.LEDに流れる電流と抵抗(R1)に流れる電流は同じため,LEDの順方向電圧をVFとすると,式1が成立します.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
そして,抵抗の値は式1を変形して式2のように求めることができます.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
問題の条件を当てはめると,抵抗の値は式3のように90Ωとなり,24シリーズの抵抗から選ぶと92Ωとするればよいことになります.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
●LEDの順電圧のシミュレーション
図2は,赤色LEDと白色LEDの順電圧をシミュレーションするための回路です.赤色LEDのQTLP690Cと白色LEDのNSPW500BSに電圧源(V1)を接続し,V1の値を0Vから3.5Vまで変化させたときの,それぞれのLEDの電流をシミュレーションします.LEDのモデルはLTspiceに標準で登録済みのものを使用しています.
V1の値を0Vから3.5Vまで変化させたときのLED電流を調べる.
図3は,LED電流のシミュレーション結果です.それぞれのLEDの順電流が20mAとなる電圧を読み取ると,赤色LEDの順電圧は1.9V程度で白色LEDの順電圧は3.3V程度となっていることが分かります.
赤色LEDの順電圧は1.9Vで,白色LEDの順電圧は3.3V.
●電流制限抵抗を入れたときの電流シミュレーション
図4は,白色LEDと直列に電流制限抵抗を入れたときの,LED電流をシミュレーションするための回路です.抵抗値は,92Ωとし,電源電圧を0Vから6Vまで変化させます.
Vccの値を0Vから6Vまで変化させる.
図5は,図4のシミュレーション結果です.図3と比べると電流の傾きが緩やかになっており,電源電圧が5VのときのLED電流は約19mAとなっていことが分かります.
電源電圧5VのときのLED電流は約19mAとなっている.
●実際のLEDで発光する電圧を確認する
色の異なる5種類のLEDで,実際に発光する電圧を確認してみます.表2が今回使用した5種類のLEDの仕様を抜粋したものです.「DC Forward Voltage」が順電圧で,「Lununouns Intensity」が光度です.光度の単位はcdを1000分の1としたmcd(ミリ・カンデラ)が使用されています.「Domi. Wavelength」は,光の波長を表すもので,赤が最も波長が長く,青が短くなっています.
写真1は,抵抗(560Ω)と5種類のLEDを配置したブレッド・ボードの写真です.数字は電圧計で測定した電源電圧を表示しています.LEDは左から,赤色,黄色,緑色,青色,白色,の順番です.左上が電源電圧1.6Vのときの発光のようすです.赤色LEDのみが微かに発光しています.右上が電源電圧1.8Vのときのもので,赤色LEDと黄色LEDが発光しています.左下が2.3Vのときのもので,緑色LEDも発光しています.右下が2.8Vのときのもので,すべてのLEDが発光してます.
電源電圧を変えてLEDの発光の様子を撮影したもの.
以上,LEDの種類と特性について解説しました.今回は,電流値の設定に抵抗を使用したものを紹介しました.しかし,電源電圧が大きく変わる場合は,抵抗ではなく,定電流源素子を使用する必要があります.
(1)日亜化学工業(株)の仕様書を参考
http://www.nichia.co.jp/specification/products/led_spec/NSPW500DS(1476A).pdf
(2)OptoSupply社の仕様書を秋月電子通商から参考
http://akizukidenshi.com/download/ds/optosupply/OS5RPM5111A-TU.pdf
http://akizukidenshi.com/download/ds/optosupply/OSYL5111A-TU.pdf
http://akizukidenshi.com/download/ds/optosupply/OSG58A5111A.pdf
http://akizukidenshi.com/download/ds/optosupply/OSUB5111A-ST.pdf
http://akizukidenshi.com/download/OSPW5111A-Z3.pdf
解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice5_023.zip
●データ・ファイル内容
LED_Red_White:図2の回路
LED_R.asc:図4の回路
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