コンデンサと抵抗を組み合わせた特性



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■問題
電気回路 ― 基礎

小川 敦 Atsushi Ogawa

 図1は,1μFのコンデンサ(C1)と1.6kΩの抵抗(R1)を組み合わせたCR回路です.IN端子に振幅が±1Vで周波数100Hzの矩形波信号を加えたとき,OUT端子の波形として正しいのは図2の(a)~(d)のどれでしょうか.


図1 抵抗とコンデンサを組み合わせたCR回路


図2 図1に矩形波を入力したときの出力波形
Out端子の電圧波形として正しいのは?

(a)の波形 (b)の波形 (c)の波形 (d)の波形


■ヒント

 コンデンサには直流信号を遮断し,高い周波数の交流信号ほど流れやすい性質があります.この性質と矩形波の波形の特徴,図1の抵抗とコンデンサの値を合わせて考える必要があります.

■解答


(c)の波形

 図1の回路はハイパス・フィルタとして動作します.そのカットオフ周波(f)は「f=1/(2π*1μ*1.6k)=100」で,100Hz以上の周波数の信号を通過させます.また,図1は,微分回路としても動作し,矩形波信号のエッジ部分のみを取り出すことができます.
 図1の回路に,カットオフ周波数近くの信号を入力した場合,その波形が正弦波か矩形波かで,入出力間の波形の変化が大きく異なります.正弦波を入力した場合,出力信号も正弦波になります.しかし,矩形波を入力した場合,出力信号は,入力信号のエッジ部分を取り出した波形になります.なので,(c)の矩形波は,エッジ部分を取り出した波形となっているため,正解は(c)ということになります.

■解説

●コンデンサと抵抗によるハイパス・フィルタ
 コンデンサの基本的な性質として,直流電流は流れず,高い周波数の交流信号ほど電流が流れやすくなります.この性質を利用し,コンデンサと抵抗を組み合わせることで,不要な周波数の信号を減衰させ,必要な周波数の信号を通過させるフィルタ回路を構成することができます.図1の回路は,低い周波数の信号を減衰させ,高い周波数成分だけを通過させるハイパス・フィルタです.信号を減衰させるか通過させるかの境界の周波数のことをカットオフ周波数と呼びます.カットオフ周波数(fC)は式1で計算することができます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

 カットオフ周波数で信号は3dB減衰し,それ以下の周波数では,周波数が1/10になるごとに,ゲインも1/10(-20dB)になります.図1の定数を代入すると,式2のようにカットオフ周波数は100Hzであることが分かります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)

●ハイパス・フィルタのシミュレーション
 図3は,コンデンサと抵抗によるハイパス・フィルタをシミュレーションするための回路です.1Hzから10kHzまでの周波数とゲインの関係をAC解析によりシミュレーションします.


図3 ハイパス・フィルタのシミュレーション用回路
1Hzから10kHzまでの周波数とゲインの関係をシミュレーションする.

 図4は,図3のシミュレーション結果です.100Hzのゲインは-3dBとなっており,そのとき位相は45度ずれています.また,カットオフ周波数以下では周波数が1/10になるごとに20dB減衰しています.このような特性を20dB/decadeで減衰する,といいます.


図4 ハイパス・フィルタのAC解析の結果
100Hzのゲインは-3dBで,それ以下では20dB/decadeで減衰する.

 図5は,図2の回路でトランジェント解析を行った結果です.入力信号は,ピーク電圧1Vで,カットオフ周波数と同じ100Hzの正弦波です.Out端子の出力信号も100Hzの正弦波で,振幅は3dB減衰しピーク電圧0.71Vになっています.また,出力波形のゼロクロス・ポイントは,入力信号よりも1.25ms進んでいます.これは正弦波の1周期10msの45/360に相当し,45度位相が進んでいることになります.


図5 ハイパス・フィルタのトランジェント解析の結果
出力信号の振幅は3dB減衰し,ピーク電圧0.71Vになっている.

●コンデンサと抵抗による微分回路
 図1の回路はハイバス・フィルタですが,微分回路としても働きます.図1の回路で入力電圧を-V1から+V1に急峻に変化させたときの,Out端子の電圧の時間的変化は式3で表すことができます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)

 図1の定数を使用すると,10μs後の電圧は式4で1.99V

・・・・・・・・・・(4)

 4ms後の電圧は,式5で0.16Vになります.

・・・・・・・・・・(5)

 つまり,OUT端子の電圧は,入力信号が立ち上がった直後,2V程度の電圧となります.しかし,4ms後には,0.16Vまで低下するような波形になることが分かります.C1およびR1の値が小さいほど,電圧の低下が速く,波形のエッジ部分のみ電圧が発生するようになります.これは入力信号を微分した波形に近いため,図1の回路は微分回路としても使われます.微分回路は波形が急峻に変化したポイントを検出する,エッジ検出回路などに使用されます.

●微分回路のシミュレーション
 図6は,微分回路をシミュレーションするための回路です.図1と同じ定数になっています.入力信号は,±1Vで周波数100Hzの矩形波信号となっています.


図6 図1と同じ定数の微分回路をシミュレーションするための回路
入力信号は±1Vで周波数100Hzの矩形波信号.

 図7は,図6のシミュレーション結果です.図6のハイパス・フィルタとしてのカットオフ周波数は100Hzですが,100Hzの矩形波を入力した場合,出力波形は入力波形とはかなり異なり,入力波形のエッジ部分が強調された波形となっています.


図7 微分回路のトランジェント解析の結果
出力波形は入力波形とはかなり異なり,エッジ部分が強調されている.

 以上,コンデンサと抵抗を組み合わせた回路について解説しました.コンデンサと抵抗によるハイパス・フィルタは,直流電圧を遮断する目的で,電子回路の中でも頻繁に使用されます.ただし,カットオフ周波数の設定によって,入力波形を正確に伝えることができないことに注意が必要です.


■データ・ファイル

解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice5_017.zip

●データ・ファイル内容
CR_HPF.asc:図3の回路
CR_HPF_tran.asc:図5をシミュレーションするための回路
CR_diff.asc:図6の回路

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