抵抗の直列接続と並列接続
図1は,R1,R2,R3の3本の抵抗を組み合わせた回路です.この回路に3Vの電圧を加えたとき,R1に流れる電流の大きさとして正しいのは,(a)~(d)のどれでしょうか.
3Vの電圧を加えたとき,R1に流れる電流の大きさは?
(a)0.5mA (b)0.75mA (c)1mA (d)4.5mA
R1に流れる電流の求め方には色々な方法があります.しかし,V1に流れる電流とR1に流れる電流が同じであることから,R1,R2,R3の合成抵抗を求め,V1に流れる電流を計算するのが簡単です.
図1の回路は,R2とR3が並列接続され,その合成抵抗とR1が直列接続されていると考えることができます.そのため,R1,R2,R3の合成抵抗値(R)は「R=R1+1/(1/R2+1/R3)」で求めることができます.図1の値を代入すると「R=1kΩ+1/(1/3kΩ+1/6kΩ)=3kΩ」となります.V1に流れる電流(I)は,3Vを3kΩで割った1mAになります.V1に流れる電流とR1に流れる電流は等しいため,R1の電流は1mAということになります.
●抵抗を直列接続したときの抵抗値
図2は,2本の抵抗を直列に接続したものです.抵抗を直列に接続した場合,その抵抗値は2つの抵抗値を加算したものになることが直観的にわかりますが,計算でも確認してみます.
それぞれの抵抗の両端電圧の和は電源電圧に等しい.
図2において,R1とR2には同じIという電流が流れています.R1の両端電圧(V1)は式1です.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
R2の両端電圧(V2)は式2で表されます.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
ここで,V1とV2を足したものは,電源電圧(V)と等しくなり式3になります.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
また,R1とR2の合成抵抗をRとすると,式4が成立します.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
式4と式1,2,3をまとめると式5になります.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
この式の両辺をIで割ると式6のように合成抵抗(R)はR1とR2を加算したものになることが分かります.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6)
図3は,式6をシミュレーションで確認するための回路とその結果です.
V端子の電圧を電源に流れる電流で割って,抵抗値を表示している.
回路は,電源電圧を0Vから5Vまでスイープさせるシミュレーションを行い,V端子の電圧を電源に流れる電流で割って,抵抗値を表示しています.LTspiceでは,電源の電流は負の値となるため,V(V)/(-I(V))とマイナス符号をつけて計算しています.図3のように,1kΩと2kΩを直列接続した合成抵抗は3kΩとなることが分かります.
●抵抗を並列接続したときの抵抗値
図4は,2本の抵抗を並列に接続したものです.抵抗を並列接続した場合にその合成抵抗値がいくつになるかは,若干,分かりにくいかもしれません.
電源に流れる電流は,I1とI2を足したものになる.
図4を使用して,抵抗に流れる電流から,合成抵抗値を計算してみます.抵抗R1およびR2に流れる電流をそれぞれI1,I2とすると,I1の値は式7で表されます.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(7)
I2は,式8で表されます.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(8)
電源に流れる電流(I)と合成抵抗(R)の関係は式9で表されます.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(9)
電源に流れる電流は,I1とI2を足したものであることを踏まえ,式7~式9をまとめると式10になります.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(10)
式10の両辺をVで割り,さらに,逆数を取ると式11のように抵抗を並列接続したときの抵抗値を計算する式11が完成します.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(11)
図5は,式11をシミュレーションで確認するための回路です.
V端子の電圧を電源に流れる電流で割って,抵抗値を表示している.
3kΩの抵抗と6kΩの抵抗が並列接続されており,式11に値を代入すると,式12のように合成抵抗値は2kΩになります.図5のシミュレーション結果も2kΩとなっています.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(12)
●抵抗を並列および直列接続したときの電流値のシミュレーション
図6は,抵抗を並列および直列接続した図1の回路の電流をシミュレーションするための回路です.DC動作点解析(DC op pnt)を実行し,回路図上にノード電圧とR1の電流を表示しています.
回路図上にノード電圧とR1の電流を表示している.
この回路の合成抵抗値は式13で計算することができ,3kΩとなります.
・・・・・・・・・・・・・・(13)
そのため,R1に流れる電流(I)は式14のように1mAと計算できます.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(14)
図6に表示したR1の電流値も1mAとなっていることが分かります.なお,LTspiceで回路図上に動作点電圧を表示するには,シミュレーションが終わった後,ノード上でマウス右クリックします.すると,図7のようなメニューが表示されるので「Place .OP Data Label」を選択します.するとノード電圧を表示するラベルが回路図上に表示されます.
シミュレーションが終わったあとノード上でマウス右クリックする.
素子の電流を表示する場合は,ノード電圧を表示するラベルをコピーした後,そのラベルを右クリックし,図8のように表示したいものを選択します.
ノード電圧を表示するラベルをコピーした後,そのラベルを右クリックする.
以上,抵抗を直列に接続した場合や,並列接続した場合の抵抗値の計算方法について解説しました.回路設計や回路の動作解析を行う場合,抵抗の直列回路や並列回路の合成抵抗値が知りたい場面は頻繁にありますが,式6および式12を使って簡単に計算できます.
解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice5_003.zip
●データ・ファイル内容
R_series.asc:図3の回路
R_series.plt:図3のグラフを描画するためのPlot settinngsファイル
R_parallel.asc:図5の回路
R_parallel.plt:図5のグラフを描画するためのPlot settinngsファイル
R_para_seri.asc:図6の回路
■LTspice関連リンク先
(1) LTspice ダウンロード先
(2) LTspice Users Club
(3) トランジスタ技術公式サイト LTspiceの部屋はこちら
(4) LTspice電子回路マラソン・アーカイブs
(5) LTspiceアナログ電子回路入門・アーカイブs
(6) LTspice電源&アナログ回路入門・アーカイブs
(7) IoT時代のLTspiceアナログ回路入門アーカイブs
(8) オームの法則から学ぶLTspiceアナログ回路入門アーカイブs