オームの法則と電圧,電流,抵抗
図1は,抵抗(R)に電流(I)を流す回路です.この回路において,抵抗(R)の両端の電圧(V)を表す式として,正しいのは(a)~(d)のどれでしょうか.
抵抗の両端電圧Vの値を表す式は?
(a) V=R・I (b) V=R/I (c) V=I/R (d) V=I+R
電圧の大きさと電流の大きさが,どのような関係になっているか,ということを考えれば,答えは簡単にわかります.
抵抗の両端に発生する電圧は,その抵抗に流れる電流に比例します.またそのときの比例係数が抵抗値です.それを式で表すと「V=R・I」となるため,正解は(a)ということになります.
●電流と抵抗から電圧を求める
電気回路において,電圧と電流の関係式はオームの法則として広く知られています.図1の回路において,抵抗の両端に発生する電圧は,その抵抗に流れる電流に比例し,その比例係数が抵抗値となります.それを表したものが式1です.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
式1の比例係数Rは電気抵抗とよばれ,単位はΩです.1Aの電流を流したとき,1Vの電圧を発生させる抵抗値が1Ωということになります.
図2は,式1(電流と抵抗から電圧を求める)をLTspiceで確認するための回路です.R1の抵抗値をRという変数にして「.stepコマンド」で1Ω,2Ω,3Ωの3段階に変化させます.LTspiceで抵抗値に変数を使用する場合は,変数を{}でくくる必要があります.そして,電流源(I1)の電流値を「DC sweepコマンド」で0~10Aまで1Aステップで変化させるシミュレーションを行います.
R1の値を1Ω,2Ω,3Ωとし,R1に流れる電流を0~10Aまで変化させる.
図3は,図2のシミュレーション結果です.シミュレーション後にマウス・カーソルをV端子に近づけるとカーソルの形が図2のように変化します.そのとき,マウスの左ボタンをクリックすると電圧が表示できます.図3は,V端子の電圧を表示していますが,抵抗の一端がGNDのため,これは抵抗の両端電圧となります.電圧は電流の大きさに比例し,その傾きが抵抗値になります.そのため,抵抗値が大きくなるほど直線の傾きも大きくなります.
抵抗値が大きいほど,直線の傾きは大きくなる.
●電圧と抵抗から電流を求める
式1は抵抗に電流を流したときの両端電圧を表した式でした.式2は,抵抗に電圧を加えたときに流れる電流を表す式になります.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
抵抗に流れる電流は電圧に比例し,その比例係数は1/Rということになります.この式2(電圧と抵抗から電流を求める)を,シミュレーションで確認するための回路が図4になります.図2と同様に,R1の抵抗値をRという変数にして「.stepコマンド」で1Ω,2Ω,3Ωの3段階に変化させます.そして,電圧源V1の電圧値を「DC sweepコマンド」で0~10Vまで1Vステップで変化させるシミュレーションを行います.
R1の値を1Ω,2Ω,3Ωとし,R1に加える電圧を0~10Vまで変化させる.
図5は,図4のシミュレーション結果です.シミュレーション実行後,マウスカーソルを抵抗R1に近づけるとマウスカーソルが,図4のように変化します.そのときマウス左ボタンを押すとR1に流れる電流を表示できます.図4を見るとわかるように,抵抗(R1)に流れる電流は,電圧の大きさに比例しています.そしてその傾きは1/Rに比例し,抵抗値が小さいほど傾きが大きくなります.
抵抗値が小さいほど,直線の傾きは大きくなる.
●電流と電圧から抵抗値を求める
式1をさらに変形すると,電圧および電流から抵抗値を求める式3になります.
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
LTspiceのグラフ表示ツールには,数式を入力してグラフ表示する機能があります.そこで,式3の数式を入力して抵抗値をグラフ化してみます.グラフウインドウの上部のI(R1)という文字を右クリックすると,図6のようなウインドウが表示されます.この中に数式を入力してOKボタンを押すと,その数式をグラフ化することができます.
I(R1)という文字を右クリックして数式を入力する.
ここでは,抵抗を表示するため,式3のように,電圧を電流で割るという式を入力します.V端子の電圧を,抵抗に流れる電流で割るため,V(V)/I(R1)と入力します.そして,OKボタンをクリックすると,図7のようなグラフが表示されます.縦軸の単位が自動的にΩとなり,抵抗値を表示していることがわかります.それぞれのグラフの抵抗値は1Ω,2Ω,3Ωと読み取れます.これは「.stepコマンド」で変化させた抵抗値と同じ値になっています.
V(V)/I(R1)を表示することで抵抗値を表示している.
以上,電圧と電流と抵抗の関係式(オームの法則)について解説しました.オームの法則は電気回路の解析や設計に必要不可欠なものです.数式は非常にシンプルですが,様々な場面で活用することができます.
解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice5_001.zip
●データ・ファイル内容
V_I_R.asc:図2の回路
I_V_R.asc:図4の回路
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