コンテンツコード | DP30231 |
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著者 | 小宮 浩 |
発行元 | CQ出版社/CQ出版社 |
価格(ライセンス料金) | 2,530円 |
仕様 | A5判 347ページ PDF 約12Mバイト |
発行日 | 2011/08/01 |
更新日 | 2011/08/05 |
制限 | ダウンロード制限: サービス停止まで |
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ライセンス条件 | ●本書は著作物であり,著作権法により保護されています.本書の一部,または全部を著作権者に断りなく,複製または改変し他人に譲渡すること,インターネットなどに公開することは法律により固く禁止されています.違反した場合は,民事上の制裁および刑事罰の対象となることがあります. ●本書は,CQ出版社から出版された,2009年10月15日 初版発行の同タイトルの書籍をPDFファイルとしたものです.電子版制作の都合上,オリジナルの書籍と比べて,一部の書体や線の太さ・種類が変更になっている場合があります.また,電子版という性格から,オリジナルの書籍と同一のプリント品質は保証できません.ご了承ください. ●予告なく,本サービス(Tech Village 書庫&販売)を一時休止または終了することがあります.サービス休止時やサービス終了後は,本コンテンツをダウンロードまたは閲覧できなくなります. |
解説
PLL(Phase Locked Loop)の技術は周波数シンセサイザとして急速に普及し,衛星通信や携帯電話などの多くの無線機器にとどまらず,様々な分野での応用が進んでいます.
専用ICを使えば,数GHzのPLL周波数シンセサイザでも少ない部品点数で作れます.しかし最近では,正確な周波数を得るだけでなく,ロー・ノイズ,小さなスプリアス,高速な周波数切り換えなど,さまざまな性能が要求されます.用途に応じて最適な設計を行うには,PLLの設計は難解で,多くの知識と技術を要します.
そこで,あえて汎用部品でPLL周波数シンセサイザを設計してみます.動作を事細かに把握でき,PLL設計に必要な知識や技術を習得できます.PLL用ICの内部に構成されている回路を理解する近道になり,ICを利用する場合に大きく役立ちます.
本書では特に,位相雑音特性について重きを置いてPLLの設計法を解説しています.発振器から発生する位相雑音がPLLの出力にどのように現れるのかを示し,位相雑音特性をもっとも良好にするループ・フィルタの作りかたも説明します.
PLLの性能を向上させるためのヒントがこの一冊に詰まっています.
目次
第1章 PLL回路と位相雑音の基礎知識PLL回路の基礎知識を深めよう
PLL回路の動作
PLL周波数シンセサイザの基本構成
実用的な構成
例題として製作するPLL周波数シンセサイザ
位相雑音特性の例
不要信号スプリアス
位相雑音を定量的に観測するための定義
位相雑音の重要性
位相雑音の発生源
位相雑音の小さいPLL周波数シンセサイザを作るには
発振器の位相雑音を定量化する
第2章 基準信号発振器の設計と特性
基準信号源に要求される特性
基準信号源に使える水晶発振器
設計のために水晶振動子の性質を理解する
水晶振動子の共振周波数を可変にする
水晶振動子を使った発振回路のモデル
発振に必要な条件をシミュレータで解析する
位相雑音特性のシミュレーション
10MHz VCXOの設計
製作した10MHz VCXOの特性
第3章 LC発振回路設計の基礎
発振器をアンプとフィルタに分けて解析する
LC共振回路の基礎
LC共振回路のインピーダンスとリアクタンス
LCR共振回路の性能はQで表す
共振回路のLとCの値の決めかた
高Qを妨げるLC素子の寄生成分
無負荷Qと負荷Qの関係
目的の共振周波数と高Qを得るフィルタの定数
フィルタ+アンプで発振器をシミュレーションする
アンプの特性を改善するには
第4章 VCOの設計と特性
VCOに要求される特性
広帯域特性を兼ね備えた低雑音VCOを作るために必要なもの
固定発振器からの位相雑音を減らす三つの方法
VCOでは位相雑音を悪化させる要因がさらに増える
低位相雑音のためには可変帯域幅を必要最小限に
バラクタ駆動回路を低雑音化する必要がある
VCOの電源を作るレギュレータの選択も重要
VCOのキー・パーツはコイルとバラクタ
特性の良いコイルを自作する
コイルのシミュレーション用等価回路を求める
もう一つのキー・パーツ バラクタ
バラクタのシミュレーション用等価回路を求める
アンプ+フィルタで定数を調整する
周波数可変範囲をシミュレーションで確認する
製作した180M〜220MHzVCOの出力特性
より広帯域の180M〜360MHzが発振できるVCO
VCOの位相雑音を測定する方法
試作した二つのVCOの位相雑音特性
180M〜220MHzVCOの位相雑音特性を改善する方法
VCOにはいろいろな共振素子が使われる
第5章 位相比較器の設計と特性
ミキサ型を例にして位相比較器の動作を理解する
ミキサ型位相比較器の問題点
信号レベルによる誤差が発生しないExOR型位相比較器
ミキサ型とExOR型に共通した欠点
動作範囲の問題を解決した位相周波数比較器
VCOへ送られる制御電圧を作る回路を追加する
位相周波数比較器を製作する
製作した位相比較器の感度
位相周波数比較器PFCの不感帯デッド・ゾーン
デッド・ゾーンの影響を小さくするアンチバックラッシュ回路
PFCは他の位相比較器より位相雑音が大きい
第6章 分周器の設計と特性
高周波PLL回路には分周器が三つ使われる
分周器の基礎となるカウンタ回路の動作
非同期カウンタで構成した分周器は誤動作する場合がある
高い周波数で使う分周器は同期カウンタで構成する
分周比固定の分周器
プログラマブル分周器
高周波を扱うPLLに必要な分周器プリスケーラ
周波数分解能を上げられるパルス・スワロ・カウンタ
パルス・スワロ・カウンタの欠点
分数分周で性能を上げる方法もある
第7章 PLLを安定動作させるループ・フィルタの考え方
特性の鍵をにぎるループ・フィルタ
ループ・フィルタの設計が悪いとどうなるか?
RC回路のゲインと位相の周波数特性を理解しよう
PLL回路は負帰還回路
安定な負帰還回路の条件
位相で考えるとVCOの動作は90°遅れ
RC1段フィルタをループ・フィルタにすると
位相余裕を確保しやすいラグ・リード・フィルタ
欠点の少ない実用的なループ・フィルタ
広帯域を可能にするにはアクティブ化が必要
3次形アクティブ・フィルタを使ったPLLの例
第8章 良好な過渡特性を得るループ・フィルタの考え方
周波数を切り替えてもすぐには目的の周波数にならない
PLLの設計には過渡応答の理解が欠かせない
RLC直列回路を例に過渡現象を理解する
RLC直列回路の過渡応答特性は減衰振動になる
振動の減衰しやすさを示す減衰係数ζ
減衰振動の固有角周波数ωDとωN
PLLの過渡応答特性を数式で求める手順
簡単な例でPLLの伝達関数を求める
伝達関数から過渡応答特性を表す式を求める
PLLの過渡応答がどのような形になるか見てみよう
ラグ・フィルタを用いたPLLの過渡応答特性
ラグ・リード・フィルタを用いたPLLの過渡応答特性
第9章 設計条件からループ・フィルタの定数を決める
どのようなフィルタが必要なのか
ループ・フィルタの回路構成
完全積分3次形PLLのループ特性をボーデ線図で表す
ループ特性の条件からフィルタの条件を求める
アクティブ・フィルタの定数を求める
チャージ・ポンプに使うパッシブ・フィルタの定数を求める
アクティブ・フィルタの定数算出例
パッシブ・フィルタの定数算出例
ループ・フィルタの設計例と位相雑音の違い
第10章 良好な位相雑音特性を得るループ・フィルタの設計法
PLLの位相余裕φCと位相雑音の関係を定量的に求める
PLLのカットオフ周波数fCと位相雑音の関係
fCを境に位相雑音の要因が入れ替わる
発振器の位相雑音特性からfCの最適値を求める
fCは分周数Nなどで変わるので補正も考える
PLLの位相雑音を最も良くするループ・フィルタの設計手順
NT=360,fR=500kHz,fout=180MHzの設計例
NT=1400,fR=200kHz,fout=280MHzの設計例
第11章 PLL回路の応用
変調のしくみと角度変調
PLLを用いて角度変調する
PLL技術のそのほかの応用例
Appendix 180M〜360MHz PLL周波数シンセサイザの外観と回路図