80Hzのカットオフ周波数を作るコンデンサ容量は何μF?



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■問題

平賀 公久 Kimihisa Hiraga

 図1は,コンデンサ(C1)により交流信号のみ増幅する非反転増幅器です.図1のゲイン周波数特性は図2であり,直流(0Hz)から低周波側のゲインは0dB(1倍)の増幅率です.カットオフ周波数は80Hzで,それ以降の高周波側でゲインが20dB(10倍)となります.約1MHz以降はOPアンプの周波数特性により制限されます.図2の周波数特性のように,カットオフ周波数が80Hzとなるコンデンサ(C1)の容量は(a)~(d)うちどれでしょうか?


(a)0.47μF (b)1.0μF (c)2.2μF (d)4.7μF


図1 コンデンサ(C1)により交流信号のみ増幅する非反転増幅器


図2 図1のゲイン周波数特性
カットオフ周波数は80Hzとなっている.

■ヒント

 図1の回路でR1とC1のインピーダンス(ZC1)を加算した値をZ1(Z1=R1+ZC1)とすると,ゲインは「G=1+R2/Z1」となります.コンデンサのインピーダンスは周波数により変わります.そのため,Z1の周波数特性を持つことにより,ゲインの周波数特性は図2のように変化します.

 カットオフ周波数(遮断周波数)とは,ロー・パス・フィルタやハイ・パス・フィルタなどの電力周波数特性で,電力ゲインが通過域のゲインから半分になる周波数のこと.電圧は電力の平方根であることから,電圧ゲインになおすと-3dB(1/√2)となる周波数.

■解答


(b)1.0μF

 図1のゲインは式1となり,Z1(Z1=R1+ZC1)の周波数特性により,図2のようにゲインは変化します.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

 図3は「Z1=R1+ZC1」の周波数特性をプロットしました.コンデンサのインピーダンス(ZC1)は,低い周波数になるほど大きくなり,直流(0Hz)では無限大(ZC1=∞)となります.また,高い周波数になるほどインピーダンスは小さくなります.


図3 R1とC1を直列に接続したインピーダンスの周波数特性
図3の中の回路でインピーダンスの測定をしている.

 このコンデンサのインピーダンスの変化により,図3に示す「Z1=R1+ZC1」の周波数特性は,R1とC1で決まる周波数(式2)を境に変化します.この周波数より低周波側ではZC1のインピーダンスが主となり増大するため,式1のゲインは下がり,直流ではZC1が無限大となるため,ゲイン(G)は0dB(1倍)となります.また,高周波側ではR1の抵抗値が現れるため,ゲイン(G)はR1とR2で決まり,20dB(10倍)となります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)

 図2のゲイン周波数特性のカットオフ周波数は,式2のR1とC1で決まるインピーダンスが変化する周波数と同じ周波数であり,問題の(a)~(d)のコンデンサの値でカットオフ周波数を調べると次のようになります.

(a) fC1=1/(2π*0.47μF*2kΩ) = 169Hz
(b) fC1=1/(2π*1.0μF*2kΩ) = 80Hz
(c) fC1=1/(2π*2.2μF*2kΩ) = 36Hz
(d) fC1=1/(2π*4.7μF*2kΩ) = 17Hz

 したがって,カットオフ周波数を80Hzとするコンデンサ(C1)の値は1.0μFとなります.

■解説

●交流信号を増幅する回路の利点
 図4(a)は,図1と同じ交流を増幅する非反転増幅器です.図4(b)は,直流,交流とも増幅する抵抗だけで構成した非反転増幅器です.


図4 (a)交流のみ増幅する非反転増幅器,(b)直流,交流とも増幅する非反転増幅器

 図5は,図4の(a)と(b)の周波数特性を示します.図4(b)の直流,交流とも増幅する非反転増幅器は,図5「(b)のゲイン」のように「G=1+R2/R1」で直流,交流とも増幅します.OPアンプには入力オフセット電圧があり,図4(b)は,この入力オフセット電圧も増幅します.そのため出力は信号の中点電圧がずれて扱いづらくなります.また,OPアンプの低周波領域には「1/f」の雑音があります.特にCMOSのOPアンプは「1/f」の雑音が大きく,これらも「G=1+R2/R1」で増幅され,出力は雑音電圧が多くなります.
 直流を増幅せずに交流信号だけ増幅する用途では図4(a)の回路を使用します.図4(a)の回路は,カットオフ周波数を境に,低周波側ではゲインが小さくなり,高周波側で「G=1+R2/R1」のゲインを持つ増幅器として働き,扱いやすくなります.


図5 図4(a),(b)の周波数特性
図4(a)はカットオフ周波数を境に低周波側で増幅が小さく,高周波側で増幅が大きい.
図4(b)は低周波側,高周波側とも増幅する.

●OPアンプの入力オフセット電圧がある場合をLTspiceで確かめる
 図6の(a)と(b)は,図4の(a)と(b)にOPアンプの入力オフセット電圧(VOS)が,1mVある状態(最悪値)を作りました.LT1128の入力オフセット電圧の最悪値は180μVですが,計算しやすいように1mVとしています. 入力信号は,図4のカットオフ周波数(80Hz)より十分高い周波数として10kHzとなっています.信号振幅は0.5mVの正弦波です.また,直流(0Hz)から低周波側を確認するため信号に遅延時間を与え,200μs後から正弦波となるようにしました.


図6 図4の(a)と(b)にOPアンプの入力オフセット電圧が1mVある回路
(a)は交流のみ増幅する非反転増幅器で,(b)は非反転増幅器.

 図7は,図6の過渡解析の結果です.OUT1,OU2の出力波形の他に,入力信号の波形もプロットしています.
 図6(a)のOUT1は,交流のみ増幅する非反転増幅回路の出力で,直流(0Hz)から低周波側のゲイン(G)が1倍(0dB)となっています.これにより,入力オフセット電圧は,増幅されず,出力オフセット電圧が1mVとなります.また,交流の信号は「G=1+R2/R1=10(20dB)」で増幅しています.
 図6(b)の非反転増幅器は,低周波も高周波も「G=1+R2/R1=10(20dB)」で増幅されています.なので,直流(0Hz)から低周波側の入力オフセット電圧1mVが10倍され,出力オフセット電圧も10mVとなっています.また,交流信号も10倍で増幅されています.直流を増幅する必要がなく,交流信号のみ増幅するなら,入力オフセット電圧などの不要な信号は増幅しない図6(a)の回路が扱いやすいことが分かります.


図7 図6のシミュレーション結果
交流信号の増幅率は同じであるが,出力オフセット電圧の増幅率に差がある.

●コンデンサの値を変えて回路の周波数特性をLTspiceで確認する
 図8は,図1のコンデンサ(C1)の容量を問題の(a)~(d)の値に変えて,周波数特性をシミュレーションする回路です.C1の値は「Cval」という変数にし「.stepコマンド」で0.47μF,1.0μF,2.2μF,4.7μFのシミュレーションを繰り返します.また,図8のC2は,図2の1MHz付近にあるゲインの急激なピークを抑える補償用のコンデンサです.ここでは33pFを使いました.この急激なゲインのピークは,負帰還が不安定になる周波数で発生し最悪の場合に発振します.


図8 図1のコンデンサ(C1)を(a)~(d)の値で周波数特性をシミュレーションする回路
C2はゲインの急激なピークを抑え負帰還の安定性を向上させるためのコンデンサ.

 図9は,図8のシミュレーション結果です.コンデンサ(C1)の値(a)~(d)の全てで,直流(0Hz)から低周波側のゲイン(G)が1倍(0dB)の特性が出ています.また,カットオフ周波数(fC1)は,解答で計算した値と同になっています(図9に記載).カットオフ周波数(fC1)は,式2ですから,信号周波数に応じて,C1とR1を選び,カットオフ周波数を調整できます.また,新たに加えたC2により,1MHz付近のゲインのピークは抑えられており,その効果も確認できます.このときのfC2は,C2とR2で決まり「fC2=1/2πC2R2=268kHz」となります.


図9 図8のシミュレーション結果
C1の値(a)~(d)の全てで直流(0Hz)から低周波側のゲイン(G)が1倍(0dB)の特性が出ている.
カットオフ周波数(fC1)は解答で計算した値となっている.

 C2は,負帰還安定性補償に関わります.負帰還の定数を変更したときはループ・ゲインと位相が変わりますので,その都度,検証するようにしましょう.詳しくは「LTspiceアナログ電子回路入門 012 ―― 500kHzの進相補償を作るコンデンサ容量値は何pF?」を参考にしてください.


■データ・ファイル

解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice2_016.zip

●データ・ファイル内容
AC_Non-inverting_Amplifier_tran.asc:図6の回路
AC_Non-inverting_Amplifier_ac.asc:図8の回路

■LTspice関連リンク先


(1) LTspice ダウンロード先
(2) LTspice Users Club
(3) トランジスタ技術公式サイト LTspiceの部屋はこちら
(4) LTspice電子回路マラソン・アーカイブs
(5) LTspiceアナログ電子回路入門・アーカイブs

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