プロセッサ最新テクノロジ2017 シリーズ19『NXP』

高解像度LCDと音声認識で先進的なHMI
高い電力効率と多彩なインターフェースをもつ
LPC54000ファミリ        



 NXP Semiconductors社(以下NXP)は,Freescale Semiconductor社との合併により,世界のマイコン市場で最大シェア(2016年,IC Insights調べ)となり,汎用マイコンのファミリとしてはKinetisとLPCが大きな柱となっています.2つのファミリでは,Kinetisファミリが産業,民生,家電などの幅広いアプリケーションの要求に合わせた展開で,LPCファミリが注目のアプリケーション向けに特色ある展開をし,相互に補完する関係となりました.以前はKinetisとLPCの開発環境は異なっていましたが,2017年3月にKinetisとLPCの全品種に対応した新しい開発環境「MCUXpresso」がリリースされ,サポート面でも両ファミリが完全にシームレスになりました.そこで,今回は,LPCファミリの最新製品として,高解像度LCDコントローラと音声認識技術を統合して,先進的なHMI(Human Machine Interface)を実現するLPC54000ファミリをNXPジャパンの水上氏,平賀氏,永井氏に解説していただきました.執筆:宮﨑 仁


左から NXPジャパン(株)第二事業本部 マーケティング・アプリケーション技術統括部の
水上 修平 氏 平賀 浩志 氏 永井 克俊 氏


1.高い電力効率とペリフェラルの統合
 私たちの身の回りには,センサ信号を取り込み,データ処理をして,高解像度のグラフィックスで表示するようなアプリケーションが急速に増加しています.例えば,ウェアラブル,ヘルスケア,スマート・ホームなどさまざまなアプリケーションが開発されています.
 NXP のLPC54000ファミリは,このようなグラフィックス表示のアプリケーションに最適な機能を実現するとともに,デジタル・マイクロホンで先進のHMIが実現できます.LPC54000ファミリは,基本製品の『LPC5410x』,USB対応で大容量SRAM搭載の『LPC5411x』,処理性能や電力効率を向上し,TFT-LCDコントラーラなどペリフェラルも一段と強化した最新の『LPC546xx』と3 つのファミリに分かれています(表1).

表1 LPC54000の3つのファミリ

 このうち,LPC5410xとLPC5411xはCortex-M4FとCortex-M0+を併用できる非対称デュアル・コアを採用しています.センサ信号取り込みなどの定型処理は,Cortex-M0+で行い,Cortex-M4Fはなるべくスリープさせることで,システムの電力効率を向上できます.LPC5411xでは,大容量SRAM上でプログラムを動作させることで,電力効率をさらに向上させることも可能です(図1).


図1 LPC5411xのブロック図

 一方,LPC546xxは,高解像度グラフィックスやモーション解析など高負荷の処理に対応するため,消費電力を抑えながらCortex-M4Fの処理性能を一段と向上し,ファミリの中で最高の処理性能と電力効率となっています.また,SPIフラッシュにより命令やデータの領域を拡張することができます.最大1024 × 768ドットのTFT-LCDコントローラ,HS-USB,Ethernet,CAN2.0/CAN FDなど多くのペリフェラル機能が追加され,高機能・高性能アプリケーションに向けてシステムの拡張性やコネクティビティも大きく向上しています(図2).


図2 LPC546xxのブロック図

2.注目の音声認識技術を搭載
 最近では,スマートフォンやカーナビゲーション,ホーム・オートメーションなどで,音声入力によるHMIが使われるようになってきました. そこで,LPC54000ファミリの特徴として,簡単な音声入力が実現できるデジタル・マイクのインターフェースとハ ードウェア音声検出を搭載しています.
 NXPでは,この機能をDMIC(Digital Microphone)サブシステムと呼んでいます.DMICは音声信号の取り込み,フィルタリング,第一音声を検出するHWVAD(Hardware Voice Activity Detector),PCM,FIFOなどのハードウェア回路と登録済みの音声の一致を検出するソフトウェアの音声認識エンジン(Sensory社)で構成されています.
 取り込みやフィルタリングなどのHWVADは,Cortex-M4FやCortex-M0+のスリープ時にも動作しています.HWVAD は,PDMで変調された音声の包絡線がノイズフロアより大きくなったことを検出し,割り込みを発生してシステムをウェイクアップさせます.ウェイク待ち状態での消費電力は50 μ A 以下で,機器の待ち受け時電力を非常に小さくできます.
 ウェイクアップによって音声検出用のPCMやFIFOがただちに起動され,音声認識に必要なデータの蓄積を始めます.続いて,Cortex-M4Fコアがウェ イクアップし,ソフトウェアによる音声認識を実行します.音声認識エンジンは,音声データを登録された音声コマンドのデータと比較し,一致すればそのコマンドに従ってシステムの動作を開始します.一致しなければ,スリープに戻ります.

3.Time to Markerをサポート
 新しい統合開発環境MCUXpressoではIDE,SDK,Config Toolsなどが提供され,いずれもNXP のWebサイトでダウンロードできます.LPC546xxの開発用ボードとしては,480 × 272 のカラーLCD タッチ・パネルを搭載しLPCXpresso Development Board for LPC5460x MCUs(OM13092)が用意されています.LPC5411xには, 評価用ボードのLPCXpresso54114 Board(OM13089)と,オーディオ/ 音声認識キットのLPC54114 Audio and Voice Recognition Kit(OM13090)が用意されています(写真1).

写真1 LPC54000ファミリの開発用ボード
OM13090:LPC54114 Audio and Voice Recognition Kit

 このオーディオ/音声認識キットは,評価用ボードのLPCXpresso54114 Board とデジタル・マイク/ オーディオ・コーデック/ 有機EL 搭載シールド・ボードを組み合わせたものとなっています.音声認識エンジンは,Sensory社のTrulyHandsfreeをダウンロードして利用できます.  LPC54000の音声認識機能は,認識するコマンドの数をマイコン上で適切な負荷で処理できる範囲に制限することによりクラウド上での処理を不要とし,バッテリー駆動のアプリケーションでも活用できます.  さまざまな機器において,直感的な操作を可能とするタッチ・パネルやタッチ・スイッチが広く普及してきました.これに加えて音声による操作という手段は機器に直接触れる必要がなく,待ち受け時の省電力や,操作デバイスの防塵防水を実現できるなどの次世代のHMIとして優れた特徴を持っています.音声操作を簡単に実現できるマイコンとして,LPC54000ファミリは機器開発者にさまざまなヒントやアイディア を与えてくれること期待しています.


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■記事に関するお問い合わせ

NXPジャパン株式会社 http://www.nxp.com/jp/
〒150-6024
東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー24階
TEL: 0120-950-032

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