プロセッサ最新テクノロジ2017 シリーズ16
NXPでは,このUSB Type-Cに必要なデバイスすべてをワンストップで提供する包括的ソリューションを他社に先駆けて展開しています.今回は,NXPのUSB Type-Cソリューションについて,同社 松野俊介氏と永井克俊氏に解説していただきました.執筆:宮﨑 仁
第二事業本部 マーケティング・アプリケーション技術統括部 永井 克俊 氏
1.急速に進化するUSBの決定版「Type-C」
USBは,元々PCと周辺機器の低速なインターフェースとして策定された規格です.2000年に480MbpsのUSB2.0が登場した後,しばらく大きなバージョンアップもなく,安定したインターフェースとして普及しました.しかし,2008年に5Gbpsの高速伝送をサポートしたUSB3.0規格が登場してから,2012年には最大100Wの電力供給を可能にしたUSB PD(Power Delivery),2013年には10Gbpsに高速化したUSB3.1,2014年には新時代のコネクタType-Cと次々に新規格が発表され,USBは大きく拡張されました.
Type-Cが作られた1つの理由は,USBのコネクタが多種多様になり,複雑になりすぎたことです.
USBはホスト(PC)対デバイス(周辺機器)の非対称な伝送方式を特徴としており,ホスト側(Type-A)とデバイス側(Type-B)でコネクタの形状を変えることによってユーザの誤接続を防いでいました.その後,デバイス側ではより小型のMini-BやMicro-Bが普及し,USB3.0/3.1では端子数などが異なるType-A,Type-B,Micro-Bのコネクタが必要になりました.さらに,デバイス同士の接続を可能にしたOTG(On-the-Go)ではMicro-A,Micro-ABなどが使われています.伝送速度や電流供給能力が異なるさまざまなコネクタやケーブルが混在し,ユーザにとってとても分かりにくくなりました.
Type-Cは,これらを1種類のコネクタで統一し,ケーブルの種類を気にする必要がなく,低速から高速まで,USB規格のすべての伝送をサポートできます.さらに,コネクタの裏表を対称にして自動で裏表判別/端子切替を可能にし,挿入時のコネクタの向きも裏表どちらでもよくなりました.また,ポート間のネゴシエーション機能をもつUSB PDと併用すれば,最大100Wの電力供給能力を持たせることができます.さらに,Type-Cのもつ裏表判別/切替機能とUSB PDのネゴシエーション機能を利用して,USBケーブルでDP(DisplayPort),HDMIなどのビデオ信号を同時に通信できるAlternateモードなどの新しい機能も追加されています.
2.TCPCにいち早く対応したPTN5110
USB Type-Cの先進性に注目したNXPでは,Type-Cポート実現のための包括的ソリューションを2015 年に発表して以降,各デバイスの製品化を進めてきました(表1).
Type-Cのデバイスを製品化しているメーカは他にもありますが,表1の内容にあるようにオプションの認証チップを含めUSB Type-Cに必要なすべてのデバイスを網羅しているのはNXPだけです.NXPは,元々ディジタル,アナログ,伝送,ビデオ,認証,パワー,MCUなど幅広い分野の製品を手がけており,豊富な技術を蓄積しています.
Type-Cポートが搭載される機器やサポートする機能にはさまざまなものがあり,それによって利用されるデバイスが変わります.USB3.0/3.1の規格内でのデータ伝送と電源供給を行うポートは,コネクタの裏表判別を行うCC(Configuration Channel)ロジックと端子切替を行う高速USBスイッチがあれば簡単に実現できます.既存システムをType-Cに対応させることも容易にできます(図1).
Type-CとPDを用いてAlternateモードや大電力の供給を行うポートは,PDコントローラとPD PHYを通してポート間のネゴシエーションやパワー管理を行う必要があります.これらのPDの機能をどのように実現するかは,これまでメーカごとに大きな違いがありました.しかし,USB TCPC(Type-C Port Controller)規格が作られたことにより,今後は統一が進むと見られています.NXPでは,このTCPC規格に準拠した業界初の製品(TCPC対応PD PHY)として,PTN5110を発売しました.PTN5110は,Type-Cの最新規格であるType-C 1.2,PDの最新規格であるPD3.0にも準拠しています.
PTN5110とNXPが提供するDP対応高速スイッチ,PD対応ロード・スイッチ,認証チップを用いれば,PDとAlternateモードに対応したモバイルPCやタブレットPCのType-Cポートを容易に構成できます(図2).
Type-C+PDでは,最大20Vの供給電圧と最大100Wの供給電力がサポートされています.これに加えて,これまでPCから周辺機器にしか電源供給できませんでしたが,ACアダプタからPCへの電源供給と急速充電が可能になります.しかも,同じType-Cポートを使って,通常の高速USBデータ伝送や,HDMI,DPなどのビデオ信号の入出力,周辺機器への電源供給を行うこともできます.モバイルPCやタブレットPCのポート数を減らすことができ,大型のType-Aコネクタを使用する必要もなくなり,多くの利点が得られます.Type-C+PDポートは,PC以外のさまざまな高性能,高機能の機器にも普及が進むと期待されます.
3.Type-Cを簡単に評価できる開発環境
NXPでは,高い機能と拡張性をもったUSB Type-Cを簡単に評価できる評価ボード(写真1)を提供しています.これは,Type-Cで接続されるホスト側とデバイス(ドック)側の2枚のボードからなり,どちらのボードもPTN5110と高速スイッチ,ロード・スイッチ,PD制御用MCUなどを搭載しています.ホスト側にはPCなど,デバイス側には従来のUSB機器などを接続して,PCと機器間でパワー,ビデオ,高速データを自由にやり取りするシステムを簡単に構築できます.
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