抵抗分圧で作る最もシンプルな基準電圧源




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■問題

小川 敦 Atsushi Ogawa

 図1は,2本の抵抗で電源電圧を分圧し,基準電圧源とした回路です.電源であるVCCの電圧は5Vです.この回路の無負荷時の出力電圧をVout1とし,3.6kΩの負荷抵抗(RL)を接続したときの電圧をVout2とします.それぞれの値が正しいのは,次の(A)~(D)のどれでしょうか.

(A)Vout1=2V,Vout2=1.5V (B)Vout1=2V,Vout2=1.2V
(C)Vout1=3V,Vout2=2.5V (D)Vout1=3V,Vout2=2.2V


図1 抵抗分圧で作った基準電圧源
無負荷時と,負荷を接続したときの出力電圧は?

■ヒント

 電子回路設計する上で,動作の基準となる電圧が必要となる場面が数多くあります.抵抗によって電源電圧を分圧して作る基準電圧源は,最もシンプルな基本回路となります.そこで,今回は,電源回路の基礎となる抵抗分圧で作る基準電圧源を解説します.
 無負荷時の電圧は,それぞれの抵抗に流れる電流を計算し,その抵抗値と電流値を掛け合わせることで出力電圧を計算する方法と,出力電圧が抵抗比で決まるということを利用して計算する方法があります.また,負荷抵抗が接続されたときの電圧は,「テブナンの定理」を応用すると直観的に分かりやすくなります.

 テブナンの定理とは,いくつかの抵抗や電圧源を含む回路を,等価な単一の電圧源と抵抗に置き換えることができる,というもので,これを使うと,負荷抵抗を接続したときのふるまいを直観的に把握しやすくなります.


■解答


(A)

 無負荷時の電圧Vout1は2Vで,負荷抵抗が接続されたときの電圧Vout2は1.5Vです.

■解説

●無負荷時の電圧を計算する
 図2は,無負荷時の電圧を計算するための回路です.R1,R2に流れる電流をIとしています.


図2 無負荷時の電圧を計算するための回路
R1,R2に流れる電流をIとする.

 まず,この電流(I)を求め,次にこの電流により,R2に発生する電圧を求める方法で,出力電圧(Vout1)を求めてみます.電流(I)は式1で求めることができます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)

 この電流による電流(R2)の電圧降下が出力電圧(Vout1)で,式2で求められます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)

 また,R1の電圧降下とR2の電圧降下の比はそれぞれの抵抗比と同じであることを利用しても出力電圧を求めることができます.「VR1:VR2=R1:R2」で「VR1+VR2=VCC」であり,さらに「VR2=Vout1」であることからVout1を求めると,式3になります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)

 当然ですが,式2と式3は同じになります.式3に図2の数値を代入すると,式4のように,Vout1は2Vとなります.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)

●無負荷時の電圧をシミュレーションする
 図3が無負荷時の電圧をシミュレーションするための回路図です.直流動作点だけをシミュレーションする場合は,「.opコマンド」を配置します.シミュレーションを実行し,電圧を知りたい配線の上にマウス・カーソルを持っていくと,ウィンドウ左下にそのノードの電圧が表示されます.出力電圧は式4で計算したように2Vになっています.
 LTspiceでは,回路図上に電圧を表示することもできます.表示方法は,LTspiceのバージョンによって多少異なります.LTspiceIVではシミュレーション実行後に,電圧を表示させたい配線をダブルクリックしてください.LTspiceXVIIの場合は,電圧を表示させたい配線にマウスカーソルを合わせ,マウス右クリックして現れたメニューから”Place .op Data Label"を選んでください.すると,図3のように回路図中に電圧が表示されるようになります.電圧が表示された回路を保存しておくと,次回からはシミュレーションを実行するだけで,回路図中に電圧が表示されます.


図3 無負荷時の電圧をシミュレーションする回路
シミュレーション結果を回路図上に表示することもできる.

●負荷抵抗を接続したときの電圧を計算する
 図1で,負荷抵抗を接続したときの電圧は,式3のR2を,R2とRLを並列接続した値に置き換えて式5のように求めることができます.

・・・・・・・・・・・(5)

 式4,式5より,無負荷時の電圧(Vout1)が2Vで,負荷を接続したときの電圧(Vout2)は1.5Vです.つまり,問題の正解はAということになります.
 また,負荷を接続したときの出力電圧はテブナンの定理を利用し,回路を変形して求めることもできます.図4の左が元の回路で,右がテブナンの定理を利用して変換した回路です.それぞれの破線の部分は,まったく等価とみなすことができます.


図4 テブナンの定理によって変換した抵抗分圧基準電圧回路
右の回路のほうが,負荷抵抗による電圧変化を把握しやすい.

 右の回路のVTは無負荷時の電圧と同じもので,式6で計算できます.

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6)

 RTはR1とR2を並列接続した値で式7で計算できます.

・・・・・・・・・・・・・・・・(7)

 そして出力電圧は式8で求めることができます.

・・・・・・・・・・・・・・・・(8)

 回路を右のように変換すると,負荷抵抗を接続することによる電圧変動のようすが,直観的に把握しやすくなります.

●負荷抵抗を変化させたときの出力電圧をシミュレーション
 図4の左の回路と右の回路が等価であることを確認するため,負荷抵抗を変化させて出力電圧をシミュレーションしてみます.図5がシミュレーション用の回路で負荷抵抗の値として「RL」いう変数を使います.


図5 負荷抵抗を変えて出力電圧をシミュレーションする回路
「.stepコマンド」を使用し,変数RLの値を変化させる.

 そして「.stepコマンド」でRLの値を変化させてシミュレーションを実行します.このコマンドは,RLという変数を1kから1000kまで,一桁あたり10ポイント変化させてシミュレーションする,という意味になります.


 図6がシミュレーション結果です.横軸は目盛部分を右クリックして表示されたウィンドウの中の,Logarithmicにチェックを入れ,対数目盛としています.左側回路の出力電圧のV(out_l),右側回路の出力電圧のV(out_r)は全く同じ値になっています.


図6 図5の回路のシミュレーション結果
左側回路の出力電圧と,右側回路の出力電圧は全く同じ.

 図6を見てわかるように,抵抗分圧で作った基準電圧源は,負荷抵抗の値が変わると出力電圧が変わってしまいます.そのため,負荷抵抗の値が変わるような用途には,バッファ・アンプを追加するなどの工夫が必要になります.


■データ・ファイル

解説に使用しました,LTspiceの回路をダウンロードできます.
LTspice3_001.zip

●データ・ファイル内容
Vref_R.asc:図3の回路
Vref_R_RL.asc:図4の回路
Vref_R_VarRL.asc:図5の回路

■LTspice関連リンク先


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